アコギの高音がキンキンする/割れて聞こえる原因と対策

アコギのフラッターエコー対策メンテナンス

アコギの高音にキンキンとした音割れのようなノイズが混ざってしまう現象についてのお話です。

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1.金属音のようなアコギの音割れ

アコギの高音域のノイズ(帯域グラフ)

自宅でアコギの練習や録音音声の編集をしていると、「キーン」という金属音のようなノイズに気がつくことがあります。

普段はアコギ本来の音に埋もれてあまり目立たないのですが、耳を澄ませると確かに聴こえるその音を録音して調べてみると1k~20kHz(キロヘルツ)という高さ。

とくに8kHzを超えるような音は演奏中にも少し浮いて聞こえます。(一般にモスキート音と呼ばれる音が15kHz前後です。)

この音はいわゆる「弦のビビり」や「純粋な倍音」とも少し似ているのですが、とくにアコギの音とノイズがきれいに重なって聞こえる場合、その原因は「フラッターエコー」と呼ばれる音響現象にあるかもしれません。

※この記事は筆者の経験と一般的な物理学・音響学の知識を通した考察から書かれています。筆者自身の練習や勉強へのスタンスについてはこちらをご覧ください。

2.アコギとフラッターエコー

フラッターエコーのイメージ

フラッターエコーとは「部屋の中で過剰に重なった反響音」によって生まれるノイズのこと。

アコギの演奏に限らず様々な場面で発生し、例えば引っ越したばかりの部屋(家具がほとんどない部屋)などで手をぱん!と叩いた時に「ビーン」と残響して聞こえる音もフラッターエコーの一種です。

このノイズは「定常波(ていじょうは)」といって、平行な壁などの間で音が同じ方向にくり返し重なる(共鳴する)ことで生まれるのですが、その結果「どこで鳴っている音なのか聞き取れない」という不思議な性質を持っています。

そのため、アコギのように元から音色が豊かでサステイン(音の伸び)のある楽器でフラッターエコーが起こってしまうと、そのノイズは本来の音と重なってまるで「アコギそのものから鳴っている」ように聞こえてしまうのです。

部屋の広さや環境によっても聴こえる音の高さや聞き取りやすさは変わるのですが、アコギを弾いている時に「ビーン」「ファンファン」「キーン」など原因不明のノイズが聞こえてきたときは、このフラッターエコーが関係している場合があります。

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方向のない音 “フラッターエコー”

「どこから音が聞こえているか分からない」というとアニメやおとぎ話の世界のことに思えますが、フラッターエコーの正体である定常波は比喩ではなく「進行方向を感じ取れない状態の音」です。

例えば、身近なところではギターの弦の揺れも定常波の一種。

ギターの弦は「弾いた方向にその場で振動している」ように見えていますが、実は物理的には「弦の両端で反射された波が重なってそのように見えている」という方が正確です。

このように定常波は「波が振動としてその場に留まり続けている」ように見える性質を持っていることから「定在波(ていざいは)」とも呼ばれます。

こうしたことから、フラッターエコーの聞こえてくる方向を判断することはとても難しいのです。

3.ノイズの原因を確かめる方法

音を出す環境による反響音の違い

アコギのノイズがフラッターエコーによるものなのかを確かめる一番簡単な方法は「演奏する部屋を変えること」です。

フラッターエコーは「大きな家具などが少ない部屋」「壁と壁が平行な部屋」「小さな部屋」などでよく目立つという特徴があり、開けた河川敷など「音が反響できない場所」では全く発生しません。

そのため、開けたところでアコギを演奏したときにノイズ音があまり目立たなくなる(もしくは種類が変わる)ようであれば、気になっているノイズはフラッターエコーによるものである可能性が高いです。

逆に防音室の中、リビング、音楽スタジオ、小さな公園など、どこに行っても同じようなノイズ音がしっかりと聴こえる場合、残念ながらアコギ本体の不具合や共振、演奏的な問題などの疑いが高まります。

ちなみに、キラキラとしたフラッターエコーは主にアコギに含まれる「倍音(ばいおん)」が部屋で共鳴して生まれるものなので、「開けたところに出ればノイズと同じ高さの音が完全になくなる」というわけではありません。

4.自宅でのノイズ対策について

吸音と拡散のイメージ

アコギで発生するフラッターエコーに対して、一番「正統派」で真正面からの対策はルームチューニング(調音)です。

ルームチューニングというのは室内の音響を整える作業のことで、例えば吸音することでノイズの音を小さくしたり、壁に凸凹を作って音を拡散させることでノイズの発生を防いだりする方法があります。

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※リンクは手頃な吸音材の一例。記載通りの密度なら悪くないもの。

ただ、正直なところ簡単にできる範囲の対策でフラッターエコーを完全になくしてしまうことはとても難しく、とくに録音などの音質をしっかり高めたい場合、宅録には色々な“音響的な壁”が待ち構えているためスタジオなどを借りての録音をお勧めします。

自宅や防音室内での練習の範囲であれば、いつもと演奏する方向を変えたり、正面に布団を積み上げたり、大型の木製家具が多い部屋で演奏するだけでもノイズの成分は大きく変わってくるので、よければ身近なところから試してみてください。


筆者自身がこの「アコギの高音の音割れ」の正体に気がついたのは実は昨年のこと。

防音室の中で聞こえる鋭くラグ(遅れ)のないノイズにフラッターエコーという発想が浮かばず、古くなってきたアコギを前に数日落ち込んでいたのですが、当のギターはぎりぎり現役で10年目に入れそうです。

今回テーマにした「反響音」はそもそも本来なら脳が無意識にシャットアウトするような音ですが、1人でもギターの状態を心配する方のお役に立てていましたら幸いです。

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