天井の防音DIYはなぜ難しい? |上下階を伝わる音と対策のお話

天井の防音DIYのイメージ防音

難しいと言われる天井の防音対策について、少し辛口でまとめたお話です。

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1.上の階からの音と防音

天井のイメージ

賃貸やマンションに住んでいると気になることがあるのが上の階からの足音や生活音です。

集合住宅では多少の生活音はお互い様とはいえ、ドタバタという足音や落下音、ドアが激しく閉まる音などが頻繁に聞こえてくるとやはり気になってしまうもの。

また、音楽や配信などをしている場合は「自分の出している音」が上の階の方に迷惑をかけていないか心配になることもありますよね。

そんなとき、色々な対策の中でもとても魅力的に思えるのが「天井の防音」です。

しかし、結論から言えば天井の防音は壁の防音などと比べてもかなり難しく、とくに上の階からの足音などを「自分の家側で防音する」ことはほとんど不可能だと言っても良いでしょう。

今回はその理由と、代わりとなる解決策について考えてみます。

2.天井の防音が難しい理由

上の階からの音

天井を防音することが難しいと言われる最大の理由は、足音など上の階からの音のほとんどが「固体音」と呼ばれる音に分類されることにあります。

固体音は防音によく使われる言葉で、音の中でも「壁や床などを振動として伝わる音」のこと。

そしてこの固体音は厄介なことに、一般にイメージされる「二重の壁」「重たいシート」「スポンジ」などの防音対策がほとんど通じない性質を持っているのです。

少し詳しくみてみましょう。

2-1 固体音と空気音

空気音と固体音

防音の世界では、普段私たちが耳にしているテレビの音や話し声など「空気の中を伝わる音」のことを「空気音」と呼びます。

それに対して、足音や洗濯機の動く音などのように「床や壁の中を振動として伝わってくる音」のことを指すのが先ほど登場した固体音です。

防音といえば「遮音と吸音」をご存知の方も多いと思いますが、実はこの2つは空気音に対してのみ有効なもの。

壁や床の中を伝わる固体音の防音を考えるときには少しマイナーな「制振」と呼ばれる対策が必要です。

2-2 遮音、吸音、制振

遮音、吸音、制振の仕組み

防音は遮音(しゃおん)、吸音、制振という3つの要素で成り立っています。

遮音は音を壁などで遮って跳ね返すこと。吸音は音をスポンジなどで吸収して弱めること。そして制振は振動や衝撃をゴムなどで吸収して小さくすることです。

二重壁の防音構造

例えば話し声を防音したい場合、壁を1枚増やして音を跳ね返したり、壁にスポンジを貼って音を吸収するという対策はよく見かけますし実際にとても効果のあるものです。

これは天井に対しても同じことが言えるので、「自分の出した音」を防音したい場合にはまだ希望があります。

制振の防音構造

では、床を振動として伝わる足音の場合はどうでしょうか。

例えば足音が床に伝わる前であれば床にカーペットを敷いて衝撃を吸収してしまうことができますし、建築中の段階であれば床板の下に制振ゴムなどを使って床からの振動が響かない構造にすることも可能です。

建物を伝わる固体音

ですが、一度足音が振動として「建物」に伝わってしまった場合、今度は振動を止める範囲が「天井と壁全体」に広がってしまいます。

こうなってしまえば、もはや固体音そのものを防音することはことは不可能と言ってもいいでしょう。

例え「天井の防音」が100%成功したとしても、今度は同じ足音が「壁から」聞こえてしまうのです。

3.DIYとしての難しさ

二重天井の設計イメージ

それでもどうしても自分の出した音を防音したい場合(もしくはわずかな効果でも足音の防音がしたい場合)、天井に対して考えられるのは「二重天井作り」「遮音シートの貼り付け」「吸音材の貼り付け」の3つです。

ただ、これも技術と安全、そして賃貸の場合は「壁を傷つけられない」という制約から一筋縄ではいきません。

こちらも順番にみていきましょう。

※この項で登場する写真は筆者が「小型防音室を自作した際のもの」です。

3-1 二重天井作り

板を使った二重天井の防音DIY

まず、天井を二重にして音の伝達を防ぐことを考えてみます。

壁などを二重にすることは防音をする上でとても有効な手段ですが、ここで真っ先に問題となるのはその材料が「重たいもの」でなければ効果が得られないということ。

それは音が「重たくて分厚いもの」にほどよく跳ね返る性質を持っているからです。

とくに、「防音が必要になる」ということは今の時点で音が「それなりの重さと厚みのある天井を通り抜けている」ということなので、薄くて軽い板を1枚増やしてもほとんど意味がないと言えるでしょう。

※軽い板を取り付けた場合「太鼓現象」という共振現象が起こって、むしろ防音性能が下がってしまうことがあります。

天井に使う板

重たい板で天井を二重にすることは不可能ではないですが、専門家による建築でさえ厳しい耐震基準のある日本で、素人がそこまでの内容に手を出すのはあまりに危険です。

例えば「高さ180cmの二段ベッドを自作して今日からはその上で寝てください」と言われれば不安を覚える方は多いと思いますが、天井の二重化はそれよりずっと難しくて危ないものなのです。

その他にも、エアコンの位置、蛍光灯の位置、火災報知器の位置、二重天井そのものへの制振などなど、問題点は上げ始めればきりがありません。

本職の大工さんでもない限り、天井の二重化DIYは諦めた方がいいでしょう。

3-2 遮音シートの貼り付け

遮音シートを切る様子

ではもう少し手軽に、天井に「遮音シート」を貼り付けるのはどうでしょうか。

遮音シートというのはとても重たい素材でできたシートのことで、壁などに貼ることでその遮音性能を高めてくれます。

→遮音シート |Amazon

こちらは本来建築に使われるもので防音にもきちんと効果があるのですが、このとき大切になるのが「重さと厚さの変化率」です。

例えば、元々とても重たくて厚さ10cmもあるようなコンクリートの表面に「1mm程度の厚さで少し軽いくらい」の遮音シートを貼り付けてもほとんど効果はありません。

一般に天井や壁によく使われているのは「石膏ボード」というコンクリートよりも軽い厚さ1cmほどの素材ですが、こちらもただ遮音シートを貼り付けるだけでは効果が薄く、製造会社の公式サイトなどでも「最低2枚重ねて使うこと」「吸音材と合わせて使うこと」が推奨されています。

また、遮音シートで一番の問題になるのはその貼り付け方です。

タッカーの使い方

通常、遮音シートの貼り付けには「タッカー」と呼ばれる巨大なホッチキスのような工具を使います。

→タッカー |Amazon

使い方は簡単で便利なものですが、この工具は「コの字型の針を打ち出して固定するもの」なので、使うと天井は小さな穴だらけに。

つまり、一般的な賃貸では壁や天井にタッカーを使うことは出来ません。

もちろん、きれいに剥がせなくなってしまう接着剤や強力すぎる両面テープなどもNGです。

遮音シートは一般に「超強力」と言われるような両面テープでも壁に貼り付けることすらできない場合が多いので、「壁や壁紙を傷つけない」という条件を考えると、こちらも賃貸では出来ない対策だと言えるでしょう。

3-3 吸音材の貼り付け

吸音材の貼り付け作業

今回登場する中では一番現実的なのがスポンジタイプの吸音材の貼り付けです。

一般にイメージされるほど劇的に音が小さくなったりはしませんが、落ちてきても安全で防音効果があり、貼り付けも「不可能」というほどではありません。

→ウレタン吸音材 |Amazon

※リンクは密度25kg/㎥のもの。過去に筆者が利用した防音専門店のものが28±2kg/㎥だったので数値通りなら悪くないです。ただし、レビューを見ると付属の両面テープの接着力はやや頼りないとのこと。

吸音材の両面テープが剥がれてしまった天井

吸音材は密度のしっかりしたものであれば2cmくらいの厚さでも音に違いを感じることができますが、話し声などの「中音域」を吸音しようとすると最低でも5〜10cmの厚みがないと効果がありません。

厚手の吸音材になると壁紙に優しい両面テープでは剥がれ落ちてしまう可能性が高くなるので、天井に貼り付けるとすれば「あまり欲張らないこと」も大切だと言えるでしょう。

少しでもスポンジの重さを軽くするためには凹凸のないフラットタイプの吸音材よりも、楔形(くさびがた)や山形などの凹凸のついたタイプを選ぶのがおすすめです。

※凹凸のあるタイプは同じ素材と重さなら、より広い帯域を吸音できるため。

吸音材にはグラスウール、ロックウール、ウレタンスポンジなど色々な素材がありますが、室内で使う場合には「きちんと室内用に作られたもの」もしくは「ウレタンスポンジ」を選びましょう。

また、吸音には厚さだけでなく密度(重さ)もとても大切なので、密度の明記がないものは避けた方が無難です。

4.天井の防音以外でできること

天井そのものの防音が難しいとき、賃貸やマンションにお住まいの場合は管理会社に相談してみたり、小型防音室の導入を検討してみることをおすすめします。

また、「天井ドン」などの行為は全く関係のない他の方への迷惑にもなってしまうのでやめておきましょう。

4-1 管理会社への相談

管理会社に電話をかけるイメージ

足音などの固体音を防ぐために一番有効なのは、「上の階の人自身に」静かに歩いてもらうこと、もしくはカーペットなどを敷いてもらうことです。

とくに、きちんと配慮して静かに暮らしいる方が多いマンションの場合、そもそも音を出している本人には「自分の足音が響いている」という自覚がない場合もあるので、まず「自分の音が響いているかも」と気がついてもらうことが大切です。

ただ、最初から直接注意に行ってしまうと「やった・やってない」の口喧嘩に発展する可能性もあり、実際建物の音の出どころは複雑で分かりにくいものなので、まずは一度マンションの管理会社に電話して相談してみましょう。

もしかすると、

(前略〜)
近頃、足音やドアの開閉音についての騒音のご相談を何件か頂いております。
マンションは多くの方が生活する共同住宅であり、足音などの生活音は想像以上に大きく響いてしまうものです。
皆様により快適に暮らしていただくためにも、室内で走り回ったりドアを強く閉めたりなどの行為はなるべくしないようご配慮ください。
(管理会社〇〇)

などのような注意書きがマンションのエントランスやエレベーターなどに張り出してもらえるかもしれません。

電話をかける前に、問題の騒音がどれくらいの頻度なのか、何時ごろなのか、どれくらい気になる音量なのかなどを具体的に、客観的に伝えられるように整理しておきましょう。

4-2 小型防音室の導入

小型防音室の効果

自分が音を出している場合、もしくはどうしても家の中だけで足音への防音を完結させたい場合には、部屋の中に「小型防音室」の導入を検討することをおすすめします。

小型防音室は「部屋の中に小さな部屋が増える」ようなイメージで、スペースは小さい代わりに壁、天井、床の全てに防音をしたのと同じ効果が得られるため、防音工事などと比べればはるかに手軽で安価です。

とはいえ、小型防音室の値段は安くても10万円くらい、高いものでは100万円に迫るようなものなので、一度詳しく調べてみるのがいいでしょう。

ちなみに、最近よく耳にする「防音室の自作」は、天井の防音ほどではないですが「とても難しい」です。

筆者は引っ越しを挟んで2回防音室を自作していますが、「DIYが1つの趣味で、そのついでに作る」のでなければあまりおすすめしません。

本気で小型防音室の導入を考えるときには、値段は高いですが王道とも言えるヤマハのアビテックス、河合楽器のナサールは一度見ておくことをおすすめします。

アビテックスの公式ページ(YAMAHA)
ナサールの公式ページ(カワイ音響システム)
筆者の自作防音室についてのページ

4-3 天井ドンについて

天井ドンのイメージ

お隣さんがうるさい時に壁をドスンと鳴らして反撃(抗議)することを俗に「壁ドン」と言いますが、その天井版を「天井ドン」と呼ぶそうです。

そしてこの記事を読んでくださっているような方は大丈夫だとは思うのですが、天井ドンはなるべくしないようにしてください。

というのも、天井ドンの音は真上の部屋だけでなくお隣さんや斜め上など様々な方向に広がってしまう上に、最悪の場合上の階との騒音合戦が始まってしまう危険があるからです。

また勢い余って壁に穴があいてしまう可能性もあるので、文句を言ってやりたい気持ちはホウキや棒などに込めるのではなく、グッと我慢して管理会社に相談するようにしましょう。

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