自作防音室に小型の換気扇を取り付けたときのお話です。
1.夏の防音室と換気
初夏から秋にかけて、密閉された防音室内の温度・湿度はすぐに高くなります。
筆者田村はいつも自作の防音室の中でギターを練習するのですが、夏が近づいてくると連続した練習は30分程度が限界です。
もちろんこまめに換気するのも良いのですが、30分では中々まとまって集中した練習は出来ませんよね。
そこで今回は前々から計画していた自作防音室への換気扇取り付けに挑戦しました。
2.換気扇取り付けの2つの課題

自作防音室への換気扇取り付けには2つの大きな課題があります。
1つは防音室の壁に「丸い穴」を開ける必要があるということ。そしてもう1つは「密閉」を基本とする防音室に対して「空気は通すのに音はなるべく通さない」という矛盾した構造の追加を求められることです。
とくに田村にとっては丸い穴を切り抜くことが1番の課題でした。
2-1 板に丸い穴を開ける方法

工作好きならおそらく一度は悩んだことのある「円形の切り抜き」。相手が厚みのある板となるとその難易度も跳ね上がります。ですが実は大掛かりなカット台などでなくても、板に丸い穴を開けることの出来る家庭向けの工具はあります。
専用のものとして有名なのはホールソーと自在錐(じざいきり)の2種類。ホールソーはドリルのように「開けたい穴の大きさに合わせた刃」を付け替えて使うのに対し、自在錐は回転する刃の位置を自分で調整して穴の大きさを設定できます。ホールソーの場合、必ず換気扇の仕様書と必要な穴の直径をよく確認してから刃を選びましょう。とくに通販サイトを利用される場合、レビュー欄をよく読むことをおすすめします。
いずれも電動工具で作業音は大きいので、使う時間帯や頻度には十分気をつけて下さいね。
※田村は今回彫刻刀による削り出しという方法を選んでいますが、彫刻刀などでの切り出しは難しい上に時間もかかります。手軽そうに見えるかもしれませんが、よほど木工などがお好きでなければ必ず専用の工具を用意しておきましょう。
2-2 換気扇を防音する方法

調べてみたところ、排気口や吸気口からの音の出入りを防ぐための仕組みのことを「防音チャンバー」と呼ぶそうです。
防音チャンバーには様々な形状のものがありましたが、仕組みはどれも簡単で「入り組んだ場所に空気を通す」ことで音の減衰を狙うというもの。つまり通気口の広さに緩急をつけたり、曲がり角をいくつも用意することで音をたくさん壁にぶつけ弱らせるわけですね。
今回の田村は防音室の元々の壁や骨格を活かして狭く曲がった通気路を作り、要所要所に吸音材を設置することで対応することにしました。
3.設計と使用した材料・工具
今回の設計や目標、使用工具などを簡単にご紹介します。
3-1 設計と構造

今回の主な目標は排熱です。熱気は部屋の上の方に集まる性質があるので、空気を取り込むための吸気口はドアの下に、逆に排気口は部屋の対角線上に位置する天井付近に作ることにしました。
下から取り込んだ冷たい空気をなるべく部屋に循環させ、熱気と湿気を上から追い出す作戦ですね。
3-2 使用した材料

今回使用した換気扇は以前別の工作(ロフト用の換気ダクト)でもお世話になった「Panasonic FY-08PD9」。小さくて静かで安い優れものです。
その他の換気扇フードやチャンバー部分には防音室製作の際に出た木板や柱の端材を使っています。
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3-3 使用した工具

今回使用した工具はノコギリ、彫刻刀、ドライバーのみです。いずれも手動工具ですね。
繰り返しになりますが、板の切り抜きには基本的に電動工具をお勧めします。
4.換気扇取り付けの作業工程
※上の動画はクリックするまで読み込まれません。データ容量などを気にしなくても良い環境でご覧ください。YouTubeサイトでご覧になられる方はこちらから。
以下では簡単な写真と一緒に作業の簡単な全体像をご紹介しますね。
①計測と設計

まずは使用素材や設置位置を考えながら計測をしていきます。今回は完成後の防音室への換気扇取り付けだったので、切り出す位置を把握するのが少し難しいですね。
②板の円形切り抜き

設置位置が決まったら、コンパスで円を書いて彫刻刀で彫り進めていきます。所要時間は約1時間。試行錯誤は楽しいのですが、木工が好きでないと辛いかもしれません。
③換気扇の取り付け

内側のスポンジを切って、貫通した穴に換気扇を取り付けていきます。今回はほぼピッタリの位置に穴が開けられたようです。
④防音チャンバーと吸気口作り

今ある柱組やドアの構造を利用しながら吸気口と防音チャンバーを作っていきます。どちらも音がまっすぐ出入りできないように工夫をしてみました。
⑤換気フード作り

仕上げとして換気口を通った音が真っ直ぐお隣さんの方向へ向かわないように、外側にも防音フードを作っていきます。換気扇本体の取り付けネジなども剥き出しの状態だったので、素朴な見た目ですが重役です。
⑥完成と効果
完成後に防音室の透過損失を測定したところ、全体の防音性能は数dB下がってしまっていました。密閉されていた防音室に10cmの大穴を開けたわけなので、素人DIYの範囲では比較的小さな音漏れに抑えられた方かと思います。肝心の換気力については申し分なく、夏場でも快適に練習が続けられるようになりました。
今の所日中のアコギ練習には問題ない防音性能を保てていますが、今後また様子を見ながら少しずつ遮音吸音などを強化してみようと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。