0.8畳の小型防音室(ver.2)を自作したお話|予算6万5千円

自作防音室(ver.2)防音室自作

なるべく小さくて性能の良い防音室を作りたい。

再びそんな思いを抱えて、2度目となる自作防音室のDIYに挑戦した時のお話です。

今回は作業風景をまとめた映像をYouTubeに載せていますので、よければ合わせてご覧ください。動画については記事後半でもう一度ご案内しますね。

動画:自作防音室(ver.2) |YouTube

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1.防音室を2回作った理由

防音室(前回作)

今回2回目の防音室を作ることになったのは、引っ越しによって前回作を解体する必要があったからです。
参照:DIY自作防音室を解体して引っ越したお話 |分解・運ぶ・捨てる

そんな引っ越しから約一年、壁や窓、部屋全体を見渡しながら様々な防音対策を考えてみましたが、やはり素人製作での「コストの低さ」「防音効果の安定性」という点で小型防音室の自作に並ぶものは思い浮かびませんでした。

今回は前作の設計方針を一度白紙に戻し、より使いやすく改善された防音室作りを目指していきます。

2.今回作のコンセプト

防音室(ver.2)デザイン図

前回作と今回作の最大の違いは設置環境と利用目的です。

前回は学生時代、実家での製作だったので部屋の中に残すスペースは最低限で大丈夫でした。
しかし、今回は一人暮らしの賃貸での防音室作りになるのできちんと生活の空間を考えておく必要があります。

つまり、前回は「防音室の設置と利用」のみを目的としていたのに対し、今回は防音と並んで「生活空間を快適に保つこと」が1つのコンセプトになるということ。

ここからは以上を踏まえて設計した防音室ver.2について、前作との比較も交えつつご紹介していきますね。

今回の製作目標は、

①椅子に座ってアコギの練習ができること
②なるべくコンパクトなサイズに収めること

の2点です。

3.防音室ver.2のスペック

今回作った防音室のサイズや性能を一覧にまとめました。

3-1 室内の広さ(内寸)

自作防音室(ver.2)

縦横:890×1250mm
高さ:1500mm

防音室のサイズは圧迫感なくギターの練習ができるギリギリを目指してみました。
人が椅子を動かし座るために必要なスペースが80cm程度であること、アコギがおよそ110cmほどの楽器であることから設計しています。
座ってのギター練習を目的としているため天井高は前回同様やや低め。譜面台をおける程度の余裕があり、使用感はとても良いです。

3-2 外枠の大きさ(外寸)

防音室ver.2外観

縦横:1010×1365mm
高さ:1514mm

防音室の総床面積はおよそ0.8畳ほど。YAMAHAの市販防音室「アビテックス」の0.8畳タイプ(1002×1443×2069mm)と比べると一回り小さいサイズです。
高さを抑えた分一般的な防音室より圧迫感が少なく、上部を収納スペースとして使えます。

3-3 重さと強度

防音室の天井に物を置くイメージ

重さ:70kg
強度:20〜30kg(天井部耐荷重)

防音室の重さは木材がおよそ50kg、その他が20kgで約70kgほど。
今回は組み立ての効率と密閉性を重視したので、強度重視の前作に比べると上からの力にやや弱い構造となりました。55kg程度の田村が上に登るには少し不安です。
とはいえ、通常の使用をする上ではかなり頑丈なので、多少の地震や衝撃などで壊れる心配はなさそうです。

3-4 防音性能

騒音計による防音効果測定

透過損失:Dr-27

前回作で出来なかったことの一つとして、騒音計(サウンドレベルメーター)を用いた効果測定を行いました。
一般に市販の10万円〜の吸音ブースがDr-15程度、50万円〜の防音室がDr-30程度であることから自作としては決して悪くない数値と言えそうです。
田村が練習として自然に弾いたギター音量(70dB)の場合、廊下に出るとほぼ全く音が聞こえなくなります。

※検証の様子は映像と音楽用レコーダーで記録して動画内で紹介しています。

4.製作期間と費用

今回作った防音室の製作期間や費用の説明です。

4-1 製作期間

製作撮影風景

今回の防音室製作期間は2月の中旬からおよそ20日間でした。

かなり長いようですが平日の日中に作業をするためのスケジュール調整や写真・動画の撮影なども合わさって間延びしているので、実際に1時間を超えるようなまとまった作業をしたのは10日ほど。
今回は木材のカットも自宅で行ったので通常であればもう少し短期間で済むと思います。

4-2 製作費用

防音室製作費用内訳

今回の製作費合計は約6万5千円でした。

前作(2万5千円)と比べると値段が倍以上になってしまっていますが、これは主に吸音材をアップグレードしたことによるもの。
使用した工具などは全て費用に含めているので、DIY好きの方はもう少し安く抑えられるかと思います。
再利用素材と手持ち工具を除いた田村の実際の出費は4万1000円でした。

5.使用材料・工具

今回使った材料と工具を簡単に紹介していきます。

※各素材の客観的な性質などについては「ホームセンターで手に入る防音材とその特徴 |100均・通販情報も」という記事をご参照ください。

5-1 使用材料

今回使用した材料の一覧です。

柱材

防音室の柱

・2×4材(38×89×1820mm)4本
・1×4材(19×89×1820mm)8本

どちらも前作からの使い回しであり、DIYでは定番の柱材です。今作では保管中に反ってしまった柱にやや苦しめられることとなったので、新品での購入時には少し気をつけて真っ直ぐな木材を選べると良いですね。

遮音材

遮音シートをタッカーで打ち付ける様子

・針葉樹合板(12×910×1820mm)6枚
・遮音シート(1.2×940×10000mm)1ロール

遮音には石膏ボードではなく木の板を用いました。前作で使用していた針葉樹合板に遮音シートを貼り付けることで表面密度を高め、中低音の遮音性強化を図ります。重さは合板が1枚10kg、遮音シートが1ロール19kgです。

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※今回使用したもの

吸音材

ウレタン吸音材

・ウレタン吸音材(25×1000×2000mm)3枚分

今回吸音材に選んだのは密度28kg/㎥のポリウレタン。前作のグラスウールに比べると吸音性能・扱いやすさ共に優れていますが、その分費用もおよそ10倍でした。加工の手間暇と完成度を考えれば値段に見合う価値はあったように思います。

制振材・防音テープ

制振ゴムと防音テープ

・制振ゴム(5×150×1000mm)2ロール
・防音テープ(6×20×5000mm)1本

前作からの改善点として、今作ではドアの周りをきちんと防音テープで密閉しました。壁板のミュートとして使用した制振ゴムはやや試験的な試みでしたが、概ね上手く機能してくれたようです。

→防音テープ |Amazon

床材

防音ジョイントマット

・ジョイントマット(5×450×450mm)10枚

こちらも前作からの再利用品で、今回は部屋の掃除のしやすさと見栄えを考慮してきちんとサイズに合わせたカットを行いました。遮音等級(カーペットの制振基準)は1級です。

金具類

金具類・小型素材

・パワービス32mm220本入り1箱
・パワービス25mm270本入り1箱
・木ネジ10mm50本入り1パック
・小さいL字金具5つ
・小さいI字金具4つ
・蝶番2つ入り1セット

金具類はほとんどが再利用品もしくは手持ち品でした。新しく買い足したのは変形してしまったI字金具数本のみです。

その他の素材

テープ類・照明など

・カーペット用押しピン30mm35本入り3箱
・養生テープ
・両面テープ
・コード付きソケット
・LED電球(40W)
・延長コード
・ギタースタンド

その他の使用素材です。ギタースタンドとその土台については完全にオプション品のため費用には含めていません。

5-2 使用工具

今回使用した工具の一覧です。

メジャー・定規

メジャーと長尺定規

DIY作業全般においてなくては始まらない道具、メジャーです。長尺定規はなくても大丈夫ですが大型製作の際はあると心強いです。

ドリル

ハンドドリル

下穴開けなどで今回も何かと入用のハンドドリル。電動タイプのものは便利ですが作業音が大きくなりやすい点に注意しましょう。

ノコギリ

ノコギリ

木材を再利用する都合で今回はノコギリを多用することになりました。基本的なカットなどはホームセンターで購入時に安く受け付けてもらえるため、新しく製作する際はそちらを頼ることをおすすめします。手間も作業音もなく、正確です。

カッター・ハサミ

カッターとハサミ

カット素材に合わせてカッターとハサミを使用しました。どちらもDIYと関係なく持っておくと便利な道具ですね。

ドライバー

ドライバー

いくつか種類のあるドライバーですが、今回使ったのはプラスドライバー大小1本ずつのみ。ホームセンターなどで硬質のドライバーセットを1つ買っておくと良いかもしれません。インパクトドライバーも作業音は大きいようです。

タッカー

タッカー

日常生活ではあまり耳慣れないですが、タッカーはホッチキスに似た針を壁などに打ち付けることができる工具。街中では駅の大型ポスターの掲示などによく使用されています。固体音はやや大きめなのでクッションなどの併用をおすすめします。

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→リムーバー |Amazon
※今回使用したもの

彫刻刀

彫刻刀

意外にも2作共通で登場している彫刻刀。今回は金具全体を埋め込むようなことはしなかったものの、取り付け時にどうしても浮き上がってしまう蝶番可動部の彫り込みを任せました。

6.作業工程と詳細

※上の動画はクリックするまで読み込まれません。右上のリストマークからお好きな動画を選べますので、データ量を気にしなくてもいい環境でご覧ください。YouTubeサイトでご覧になられる場合はこちらから。

以下では作業の流れについて簡単に解説していきます。
今回は個別に詳細記事を作ることはしませんので、実際の作業についてはよければ上の動画を合わせてご覧ください。

6-1 製作環境の準備

作業スペースの様子

まずはこれから作業を進めていくための環境を整えます。
今回は部屋の中にあった家具を廊下に避難させ、室内を素材置き場、作業スペース、道具置き場の3セクションに分けてみました。

仮の置き場所を設定しておくと一連の作業や整頓の手間がぐっと減るのでおすすめです。

6-2 素材の調整と下ごしらえ

続いて各素材のカットや組み合わせを行なっていきます。

①ジョイントマットの準備

ジョイントマットのカットの様子

初めにジョイントマットを切り分けて防音室の設置場所を作ります。
今回使用するジョイントマットは制振効果のあるもので、防音室を作る際の作業によって発生する振動音を和らげる意味でも必須です。

②木材カット

木材カットの様子

引っ越しで持ってきた前回作の木材たちを設計図に合わせてカットしていきます。
カットは全体的に音が大きくなりやすく時間と労力もかかる作業なので、なるべくホームセンターにお任せしましょう。カットは平日の日中、ジョイントマットを二重構造にしてまとめて行いました。

③遮音材・吸音材・制振材カット

遮音材・吸音材・制振材のカットの様子

購入した遮音シートとウレタン吸音材、制振ゴムをカットしていきます。
今回は遮音シートをカッター、ウレタンスポンジと制振ゴムをそれぞれハサミで切りました。
スポンジは厚みと弾力があるため綺麗に切るのがやや難しく、制振ゴムは硬く弾力も強いためカットに力が必要です。

3つの素材はいずれも石油製品で独特の揮発臭がするため、とくに苦手な方は作業中しっかりと室内の換気をしてください。匂いは3日〜1週間程度で薄くなっていきます。

④木材穴開け

木材の穴あけの様子

各素材のサイズ調整が終わり、今度はカットした木材に穴を開けていきます。
カットに比べれば音も小さく簡単な作業なのでサクサクと進めていきましょう。この時ドア部分の蝶番設置位置も少し彫っておきました。

⑤遮音シート打ちつけ

タッカーによる遮音シート打ちつけ

素材準備の最後として壁板に遮音シートを打ち付けておきます。
トンカチほどではないですがやや衝撃音がある作業なので、床の上で直に行うのはおすすめしません。壁のつなぎ目部分には少し工夫した切れ込みを入れてみました。

6-3 組み立て

素材の下準備が終わると次はいよいよ組み立て作業です。

①柱の組み立て

柱組み立ての様子

防音室の骨格となる柱を組み立てていきます。
今回は先に長方形の枠組みを2つ作り、それを縦の柱で繋ぐ形の構造にしました。
一人では大変な作業もあるので誰かに助っ人を頼めるといいですね。

②制振ゴム貼り付け

制振材貼り付けとコード引き込み

完成した柱組に壁板のミュートとして制振ゴムを貼り付けていきます。
作業は最も音がぶつかることになる長辺のみに行いました。今回はこの制振ゴムの厚みを利用して防音室内へのコードの引き込みも行います。

③壁板取り付け

遮音壁取り付けの様子

遮音シートを打ち付けた壁板と天井板を取り付けて行きます。
今回はコーキング作業を行わない代わりに、壁のつなぎ目にできる隙間を2枚の遮音シートがカバーしてくれる仕組みにしてみました。この段階で防音室は正規の設置位置に移動させておきます。

④天井板取り付け

天井板取り付けの様子

天井板の取り付けは柱組や全体の歪みの影響を受けやすい作業です。
前先では苦戦したこの作業ですが、今回は幸運にも順調に進めることができました。木材サイズの都合で内側からも4箇所、L字金具で固定しています。

⑤ドア取り付け

ドア取り付けの様子

ドアの取り付けは防音室の使い勝手を左右する大切な作業です。
前作ではドア板が床に擦ってしまって修正が必要だったので、今回は少し余裕を持ってドア下に1cmの隙間を設けてみました。飛び出してしまう蝶番裏のネジは端材でカバーしています。ドアノブは前回に引き続き端材とI字金具の組み合わせです。

⑥吸音材貼り付け

吸音材貼り付けの様子

大掛かりな作業としては最後の難関となる吸音材の貼り付け。
ポスター用の両面テープを使った接着を試みましたが、約1日で天井部が剥がれてしまったため急遽カーペット用の押しピンで吸音材を固定することに。

どうやらスポンジ保護のために貼った養生テープと、僅かに大きく切ってしまったスポンジの反発力があまり良くなかったようです。

⑦内装仕上げ

内装仕上げの様子

最後は照明や壁掛けギタースタンドなどの内装を整えて行きます。
照明はコード付きのソケットと電球を選んで買っておくと素人でも難なく取り付けることができます。ギタースタンドは余っていた柱材を土台にして取り付けました。

6-4 防音効果測定

防音効果測定の様子

完成した防音室の防音性能をきちんと測定してみます。
今回は騒音計(サウンドレベルメーター)の使用に加えて、計測の様子を音楽用レコーダーと映像で記録しました。音量を上げればカメラの標準マイクでは拾えない小さな音まで録音されていますので、よければご参考に。

まとめ

以上で予定していた防音室第二弾の製作は完了となります。
今回は程よい生活スペースと練習空間を確保できた上に、数値的な防音性能も予想より良かったため、製作開始時の目標は達成としても良さそうです。
また、個人的に前回作に対して抱えていた設計・性能的な改善点や反省点なども概ね上手く修正することができました。
ゆっくりではありますが今後もまだまだ防音室の改良や検証、部屋全体の防音対策などを進めていく予定ですので、よければお楽しみに。

※防音室のその後
自作防音室の床を浮き床二重構造にしたお話 |床防音DIY

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