賃貸物件の内見で防音性を判断する方法

防音

賃貸物件の防音性を内見でなるべく正確に知りたい。

これって防音をテーマに部屋探しをしていると誰もが一度は思うことですよね。
しかし当然ですが、ただ漠然と部屋の中を見渡していても賃貸の防音性は見えてきません。

今回は判断の難しい建物の防音性について、内見で少しでも正確に見極める方法を考えていきましょう。

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1.内見と防音

内見(内覧)というのは気になっている物件の中を実際に見せてもらって様々な確認をすること。

例えば、建物の中は綺麗か、部屋の広さは実際どれくらいなのか、日当たりや窓からの景色はどうだろうか、収納スペースはどんな大きさだろう、など写真や賃貸サイトの情報だけでは分からないことを実際に目で見て確かめるために行います。

そして中でも内見で確認するのが難しいのが今回のテーマである「部屋の防音性」について。
音は目に見えませんし、そもそもお隣さんやご近所さんがその日家にいるかどうか、その時何をしているかによっても聞こえてくる音は変わってしまうからです。

ほんとうは実際に数日間そこで過ごすことが出来れば1番良いのですが、内見できる時間というのは残念ながら限られたもの。
なので今回はいくつかのポイントに的を絞りながら部屋の防音性をチェックしていきましょう。

2.内見の前にすること

防音をしっかり考えながら内見を進めていくために、まず下準備としてしてほしいことが2つあります。

1つは賃貸サイトから防音についての情報を読み取れるようになること。
そしてもうひとつは賃貸物件の口コミを調べてみること。

つまり、今見にいきたいと思っている物件について少し予備知識をつけておくということですね。
防音については内見だけでは分からないことも多いので、案外これがとても重要になります。

それぞれ順番に見ていきましょう。

2-1 賃貸サイトの防音情報を知る

まずは気になっている賃貸物件の情報をもう一度確認してみてください。

賃貸サイトのページには色々な情報が掲載されていますが、その中でも「建物の構造」や「間取り」は部屋の防音性を予想するためにとても大切なもの。
例えば鉄筋コンクリート、鉄骨造り、角部屋、最上階などの言葉にあまりピンとこないという方は良ければ「防音賃貸の探し方 |音に強いマンション・アパートって?」という記事を合わせて読んでみてください。

気になる物件を闇雲に内見していくのも良いのですが、賃貸サイトからある程度の防音性が予測できるようになると少し部屋探しが楽になりますよ。
調べるのが面倒だという方には「鉄筋コンクリート(RC)造り」のマンションをおすすめしておきます。

参考URL:アパマンショップ

2-2 賃貸物件の口コミをみる

次に、実際にそのマンションやアパートに住んでいた人の口コミを調べてみましょう。

口コミはどの建物でも必ず見られるとは限らないのですが、やはり実際に住んでいた人たちの声というのは何よりも参考になります。
インターネット上には物件の口コミサイトのようなものもいくつかあって、多くの場合は自分の住んだことのあるマンションの口コミを書き込めば無料で利用することができます。

なのでもし出来れば音についての高評価や低評価をいくつか見ておくと良いでしょう。

参考URL:マンションノート

3.壁の防音性

それでは、さっそく壁の防音性から内見を始めていきましょう。

ここでは「厚さ」「素材」「構造」の3つについて考えてみます。

3-1 壁の厚さ

まず、隣の部屋との壁の厚さを調べてみます。

壁の厚さというのは部屋の防音性能にも分かりやすく直結しているとても大切なもの。
そして同時に、内見で調べることが非常に難しいものでもあります。

全てのマンションに通用するわけではないのですが、今回は2つのチェック方法を見ていきましょう。

①玄関の間隔を調べる

もしも部屋が一列に並んだようなマンションを内見に行くのであれば、はじめに見て欲しいのは「玄関のドアとドアの距離」です。

というのも、この場合内見する家とお隣さんの家のドアの距離はそのまま壁の厚さである場合があるから。
写真のようにドアが背中あわせのようになっていてお隣さんとは反対向きに開けるようなマンションでは「玄関のドアの距離=壁の厚さ」と考えて良いでしょう。

部屋が横並びでない場合や、全ての部屋のドアが等間隔で同じ方向に開く場合にはこの方法は通用しません。

②室内の梁や柱を調べる

低層鉄筋コンクリートマンションの内見に行く場合は「室内の梁や柱」に注目してみましょう。

梁や柱を使った建物の構造を「ラーメン構造」、梁や柱を使わずに壁の強さだけで建物を支える構造を「壁式構造」と言うのですが、部屋が何の出っ張りもない平らな壁だけで囲まれている場合は壁式構造の可能性が高いです。

壁式構造の壁には頑丈で厚みのあるコンクリートが使われるので、もしも部屋が壁式ならば「壁は分厚く、遮音性(音を跳ね返す力)にも優れている」と考えて良いでしょう。

なお、高層マンションに壁式構造が使われることはまずありません。

3-2 壁の素材

次に、お隣さんの部屋との間の壁(戸境壁)の素材を調べていきます。

と言っても、やることは簡単で「軽くノックするように壁の中央を叩く」だけです。
有名な方法なので防音の内見と言えばこのイメージを持っている方もいるかもしれませんね。

賃貸の壁には主に「軽くて音を通しやすい石膏ボードの壁」と、「重たくて音を通しにくいコンクリートの壁」の2種類があるんですが、壁をノックすることでそれを確かめることが出来ます。

具体的にはノックした時の音が「コンコン、ゴンゴン」と響くように聞こえれば石膏ボードの壁、「コッコッ、トットッ」のようにほとんど音にもならなければコンクリートの壁です。
イメージとしてはスニーカーでウッドデッキを歩く足音とアスファルトを歩く足音の違いのようなものですね。

内見では少なくともコンクリートの壁であれば「防音性に優れた部屋である」と思っても大丈夫です。

ただ、よく言われる「ノックの音が響きやすい壁は遮音性も低い」というのは実は正確ではありません。
というのも、ノックで調べられるのはあくまで「壁の表面」の素材だけだから。

内見での判断は至難ですが、例えば表側に石膏ボードを使ったコンクリート壁の建物だってたくさんあるんです。

3-3 壁の構造と防音性

壁の構造には大きく分けて4つの種類があります。

今回はおまけとして壁の内側の仕組みについても少し見てみましょう。

※少し補足的な話になるので内容は折りたたんでおきます。
※あまりに細かい内容や構造は省略しています。

石膏ボードの壁

ノックの音:コンコン(響く)
遮音能力:低い
間仕切り壁、木造・鉄骨造の戸境壁

まずは壁が石膏ボード(と吸音材)だけで出来ている場合。

このタイプの壁は室内の間仕切り壁(家の中で部屋と部屋を分けている壁)や、木造・鉄骨造りのマンションの戸境壁(隣の家と自分の家を分けている壁)によく使われます。
石膏ボードの枚数や吸音材の質、壁の厚さなどによって防音性に違いはありますが、やはりコンクリートの壁と比べると遮音性は低いです。

一般的に「テレビの音が聞こえる」「隣の部屋の人が何を話しているかまで分かってしまう」などの騒音問題を抱えやすいのもこのタイプ。
木造・鉄骨造りの賃貸でノックの音が響く場合はまず石膏ボードのみで作られた壁だと思って良いでしょう。

鉄筋コンクリート造りのマンションにこの壁が採用されることは稀ですが、壁厚が15〜18cmくらいなのに石膏ボードが使われている場合は要注意です。
※鉄筋コンクリートについてはGL工法、LGS工法の欄も参照。

コンクリートの壁

ノックの音:コッコッ(響かない)
遮音能力:高い
鉄筋コンクリート造の戸境壁

次に、壁がコンクリートだけで出来ている場合。

このタイプの壁は鉄筋コンクリート(RC)造りや鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造りのマンションの戸境壁によく使われます。

コンクリートの壁は標準的な遮音性が高く、最も薄い12cm程度の壁でもテレビや掃除機の音はほとんど音漏れせず、話し声も「何か話していることは分かる」程度まで小さくなります。
ノックの音が全く響かなかった場合は建物の構造によらずコンクリートの壁だと思って良いです。

ただし壁厚が薄めの場合、固体音(ドアの開閉音や足音など)の遮音性は石膏ボードの壁とあまり変わりません。

GL工法の壁

ノックの音:コンコン(響く)
遮音能力:中ぐらい〜高い
鉄筋コンクリート造の戸境壁

次はコンクリートの壁に「GL工法」と呼ばれる方法で石膏ボードを取り付けた二重壁の場合。

このタイプの壁は鉄筋コンクリート造りや鉄骨鉄筋コンクリート造りのマンションの戸境壁として使われることがあります。

「二重壁」と聞くと防音に強そうなイメージを持ってしまいますが、実はGL工法は「ただのコンクリートの壁よりも遮音性が低くなってしまう」ことが知られています。
今回は詳しい解説は省略しますが、直接の原因はコンクリートと石膏ボードの隙間が狭く共振しやすいことと、コンクリートと石膏ボードがボンドで繋がっていて音が伝わることの2つ。

ただし、人の耳につきやすい「高い音」についてはコンクリートだけの壁よりも優れた遮音性を持つので、GL工法だけを理由に無理に薄いコンクリート壁の物件を選びなおす必要はないと田村は思います。
実際、低くてくぐもった音というのは案外音量の割に小さく聞こえるものですし、輪郭のはっきりした音は小さくても気になってしまうものですからね。

体感的な防音能力と実際の遮音性は似ているようでまた少し違うお話です。

LGS工法(+コンクリート)の壁

ノックの音:コンコン(響く)
遮音能力:高い
高級鉄筋マンションの戸境壁

最後はコンクリートの壁の内側に「LGS工法」という方法で石膏ボードの壁を作った二重壁の場合。

このタイプの壁はコストがかさむ上にどうしても分厚くなるため鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリートの中でも少し高級なマンションの戸境壁に使われます。

吸音材の有無などによって変わりますが、防音性はただのコンクリート壁より高い場合が多いです。
GL工法と違うところはコンクリートと石膏ボードが直接繋がっていなくて隙間も広いこと。
またしても説明は省きますがこれは防音を考える上ではとても有利な特徴だと言えます。

とくに壁の隙間に吸音材を詰めたり石膏ボードの内側に遮音シートを貼り付けたりしている場合は、実質「防音仕様」の壁構造だと言っても良いでしょう。

4.床と天井の防音性

さて、おそらく最も内見で調べることが困難なのが「床と天井の防音性」です。

床と天井の防音能力については壁よりもさらに目に見えない範囲で決まってしまう部分が大きく、天井に至ってはノックしてみることすら出来ません。

床についてよく言われているのは「かかとで軽く蹴ってみて柔らかい材質で音が響けば二重床、硬くて音が響かなければ直床」というものですが、この判断方法の場合、直床の方が防音性は高いでしょう。
というのも、防音のされていない二重床は共振と呼ばれる現象によって音を響きやすくしてしまうことが知られていますし、防音のために作られる二重床は音の響きをなくす工夫(制振と吸音)がされているので元々音は響きにくいからです。

感覚的な話で申し訳ないのですが、「足裏全体を使うようにして床を蹴ってみてどれくらい音が響いて感じるか」による判断が1番正確かもしれません。

5.窓の防音性

意外と大切なのが窓についての防音性のチェックです。

多くの場合、バルコニー(ベランダ)へ続く窓は部屋の壁丸ごと1面と言っても良いほどの大きさがありますよね。
つまり、そこから受ける影響も決してバカに出来ないということ。

窓ガラスの場合、防音性は二重サッシ(二重の窓)が最も優れていて、その次に防音ガラス(合わせガラス、真空ガラスなど厚みのあるもの)、普通のガラスと続きます。

ただ二重サッシや防音ガラスは少し特殊な環境でなければほとんど標準採用されることはないので、今回は「普通の窓」について2つのポイントをチェックしておきましょう。

5-1 窓の厚さ

一般的な窓に使われる窓ガラスの厚みは3〜6.8mmほど。
そして実はよく見かける「黒い網目の入った窓」というのはこの中では最も厚い6.8mmに該当します。

なので、まずは「窓に網目が入っているかどうか」をひとつの基準として考えるのが良いでしょう。
透明な窓の場合は、明らかに薄い3mmなどの窓でないことを確認します。

薄くて透明の窓は「少し押したり強い風が吹けば割れるのではないか」と思うほど頼りないので、それほど判断は難しくないと思いますよ。
不安であればどこかで網目入りの窓のイメージを覚えてから内見に臨んでみてください。

5-2 窓枠(サッシ)

窓において最も注意して見て欲しいのは「窓枠」です。

内見でここを気にする方はそれほど多くないと思うのですが「窓枠がしっかりしていて窓ガラスとの隙間がない」というのは防音にとってはとても大切なこと。
古い建物や精度のよくない造られ方の建物だと、窓のアルミサッシと窓ガラスは明らかに建て付けが悪い場合があります。

窓の防音性にこだわるのであれば「窓がスムーズに動くこと」「閉めたときにぴったりしまった感覚があること」の2点はチェックしておきましょう。

6.玄関とドアの防音性

最後は玄関や室内のドアの防音性をチェックしていきます。

ワンルームマンションの場合は玄関の防音性もとても大切になってきますし、1kマンションの場合は廊下と居室を仕切るドアにも少し注目しておきたいところです。

6-1 玄関のドア

玄関のドアで確認しておきたいのは「どっしりとしたドアであるか」と「部屋の位置」です。

当然ですが、まず玄関のドア周りに隙間がないこと。
これをクリアしないことには防音性はもちろん生活面でさまざまな支障が出てきます。

次に、ドアをノックしたときの音が「コンコン」程度であること。
今時珍しいかもしれませんが、少し古い建物になるとノックの音がとてもよく響く薄い鉄板でできたドアなどもあります。
基本的にどっしりと重量感のあるドアほど遮音の能力が優れているので、あまりに軽い印象のドアは避けるようにするといいでしょう。

またエレベーターや階段の近くなどマンションの住人がよく通る場所はやはりそれだけ音が気になる可能性も高くなります。
なので特にワンルームマンションの場合は部屋の位置にも少し気をつけてみてください。

6-2 室内のドア

1kマンションなどの場合は廊下と居室の間にも室内ドアがありますよね。
このドアは玄関外と居室の音をシャットアウトする上でとても大切な役割を果たします。

室内ドアでチェックするポイントは「隙間があるかどうか」の一点。
というのも、室内ドアというのは元々軽い素材で作られている場合が多いためドアそのものの遮音能力にはあまり差が生まれないからです。
逆にドアの隙間の大きさは建物によってかなり差があるので確認してみましょう。

ただ、室内ドアだけを理由に部屋を選び直すくらいなら、自分で工夫して隙間を塞いでしまうのもいいかもしれませんね。

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