ライブやスタジオ練習でエレアコがハウリングしてしまうのは仕方のないことなの?
そもそもハウリングってどういう意味?
これってエレアコを使う人なら一度は悩む問題ですよね。
とくにバンドの中でエレアコを使っていると、ドラムやエレキギターの音量に負けないようにボリュームを上げる必要があるので、ハウリングと音抜けの対策に困ってしまう人が多いです。
今回はハウリングについての基本的な知識や原因から、なるべく音量を下げないハウリングの防止対策・方法までをご紹介します。
1.エレアコの「ハウリング」とは
ハウリングとは、エレアコをつないだスピーカーが「フォーン、ボー」などのノイズ音を出してしまう現象のこと。
部屋やホールの中でエレアコとスピーカーの音量が上がりすぎたときに必ず起こる現象で、「フィードバック」とも呼ばれます。
普段の生活で言うと、たまにマイクを使った講義や演説で「キーーン」という耳に痛いノイズを聞くことがありますが、実はあれも同じハウリング現象に含まれます。
1-1 ハウリングは音の循環のこと
ハウリングとは簡単に言えば「スピーカーとマイクの間で音がぐるぐる回ることで出るノイズ」のことをさす言葉です。
つまり、
①マイクに音が入る
②スピーカーから大きな音で出てくる
③マイクがその音をもう一度拾ってしまう
④スピーカーからもっと大きな音が出る
※以降③④の繰り返し
というふうに、初めの小さな音が無限に大きくなり続けることで起こるのがハウリングです。
本来なら一回だけ音が大きく出来ればそれで良いんですが、その大きくなった音をもう一度マイクが拾ってしまうと音がどんどん大きくなっていってハウリングノイズが発生してしまうということなんですね。
エレアコの場合は「マイク」の代わりに「ピックアップ」と呼ばれる音を拾う装置が入っているんですが、ハウリングの仕組みは全く同じだと思ってください。
1-2 ハウリングはバンドライブの天敵
弾き語り演奏やソロギターのように静かな環境でエレアコを使う場合は、ほとんどの場合ハウリングに悩むほど音量を上げる必要はありません。
しかし、問題なのはドラムやエレキギターなどがあるバンドでエレアコを使う場合です。
というのも、バンド演奏でのアコギの音はドラムなど周りの楽器に埋もれてしまうことが多いから。
田村も初心者のころは「音抜けのいいピッキング」が苦手で、結果的にかなり音量を上げないとエレアコの音が聞こえなくなってしまい、ハウリングとの付き合いには苦労しました。
ライブハウスなどではPAさん(音を調整してくれる人)がいて、なるべくエレアコの音も聞こえるように調整してくれますが、ハウリングが起こってしまうとやはりエレアコの音量を下げたり、音色を変えたりせざるを得ません。
なので、今回はハウリング現象の仕組みを通して、なるべく「音量を下げずにハウリングを防ぐ方法」を見ていきましょう。
2.ハウリングの原因と防ぎ方・対策は?
エレアコがハウリングを起こす原因は大きく分けると
・音量の上げすぎ
・エレアコとスピーカーが近すぎる
・エレアコとスピーカーが向かい合っている
の3つです。
実は元をたどればどれも「音が大きすぎる」という原因になるので、ハウリングはギターかスピーカーの音量を下げてやれば絶対に解決できます。
ただ、それだと「もっと音量を出したい!」というときに困ってしまいますよね。
実はエレアコのハウリングを防ぐ方法はたくさんあって、具体的には
・音量を下げる
・スピーカーから離れる
・サウンドホールにふたをする
・低音をカットする
・ピッキングを練習する
の5つです。
さっそくそれぞれの詳細を見ていきましょう。
音量を下げる
これはシンプルにスピーカーから出る音を小さくすることで、エレアコとスピーカーの間で起こる音のループを防ぐという方法。
例えばスピーカーの音量が0なら音の循環は絶対に起こりませんし、音量が小さくなればそれだけエレアコが再び音を拾ってしまう可能性も減ります。
ハウリングに対しては最も簡単で効果が高い対策ですが、この方法ではライブで出せるアコギの音量が下がってしまうというのがデメリットですね。
スピーカーから離れる
ライブやスタジオ練習のときにうっかりやってしまいがちなのが「スピーカーの正面に立って演奏する」「スピーカーに近づきすぎる」というミスです。
これは本来ハウリングが起こらないような音量だとしても確実にハウリングを起こしてしまう原因となるので、慣れないうちは常にスピーカーの位置や向きを気にするようにしておきましょう。
スピーカーの正面を避けて、スピーカーから離れるように移動すればそれだけでエレアコに届く音がかなり小さく弱くなるので、とても効果的にハウリングを防ぐことが出来ます。
強いて言えば立ち位置がかぎられてしまうことがデメリットですが、スタジオやライブでマイク・エレアコを使うときには基本中の基本なのでぜひ覚えておいてください。
とくにライブハウスでは足元(もしくはステージの横)に置かれている「モニタースピーカー」がハウリングを起こしやすいので要注意です。
※モニタースピーカー
モニタースピーカーは演奏者が自分たちの音を聞くために使われるスピーカーで、客席ではなくてプレイヤーのほうに向けられているのでとてもハウリングを起こしやすいです。
一般的には「返し」と呼ばれることが多いです。
サウンドホールにフタをする
さて、先ほど紹介したモニタースピーカーですが、実はボーカルマイクの場合は「返し」の方向と反対側から音を集めているのでそれほどハウリングは起こりません。
ところが、エレアコの場合「サウンドホール」と呼ばれる音を響かせるための穴がもろに「返し」のほうに向くことになってしまいますよね。
つまりエレアコは仕組みてきにモニタースピーカーの音量が上げにくい楽器なので、「ライブ本番でほとんど自分の音が聞こえない」なんていうこともよくあるんです。
そこで有効な対策がアコギやエレアコに空いているサウンドホールに「専用のカバー」を取り付けるというもの。
少し重たいのでボディの振動も少し抑制してしまいますが、スピーカーの音がアコギの中に入り込んで共鳴してしまうのを防いでくれるので、ハウリングに対する効果は大きいです。
サウンドホールのカバーは黒いどっしりとしたゴムで出来たものがおおく、楽器屋さんでの値段は500円〜1000円ほどです。
実はこのフタは普段の練習での「消音用」としても使えるのでアコギ・エレアコ弾きの方は1つ持っておいて損はないでしょう。
ちなみにボディの音を邪魔しないように工夫されたタイプもありますが、お値段は1万円を超えてしまいます。
低音(low)をカットする
なんだか少し難しそうですが、これは「イコライザー」と呼ばれる装置を使って「アコギの低音成分だけ音量を下げる」という方法です。
イコライザーは簡単に言えば音の中の「高音」「中音」「低音」などの成分ごとに音量が変えられるすごい道具のこと。
「そんなもの持っていない!」と思われるかもしれませんが、実は市販で売られているエレアコにはほとんど場合もとからイコライザー機能が付いているので安心してください。
もし付いていなくても、エレアコを接続するスピーカーやアンプには必ずイコライザーがあります。
アコギの場合はボディで低音が共鳴してハウリングを起こしやすいので、低音だけをカットすることで「アコギ全体の音量感」を下げることなくハウリングを起こりにくくすることができます。
よくハウリングを起こして不安な方はあらかじめ少し低音を弱めておいても良いでしょう。
ピッキングを練習する
ここまでのハウリング対策をやってみて「どうしてもアコギ・エレアコの音が小さい」「音抜けが悪く聞こえにくい」などの場合はとにかく右手とピッキングの技術を磨きましょう。
というのも、アコギ自体を大きくしっかりとした音で鳴らせるようになればスピーカーの音量を限界まで上げなくても十分にいい音で演奏ができるようになってくるから。
少し間違った例えですが、「生音で鳴らせる音量が2倍の大きさになれば、スピーカーの音量を半分にしても今と同じ音量でライブができる」というようなイメージです。
実際には生音で出せる「音量」をあげると同時に「音抜けのいい音」つまり、しっかりとした「芯」のある音を目指して練習していくことになります。
なかなか一瞬でできるようなことではないですが、少しずつ自分のペースで挑戦してみてください。
良かったら別記事の中で一緒に練習していきましょう。
3.ハウリングとエレアコのピックアップ(おまけ)
以前「エレアコのピックアップの種類・特徴・選び方を徹底解説」という記事でエレアコのピックアップの種類や仕組みについてご紹介しましたが、今回はそれぞれのピックアップとハウリングの関係について簡単にご紹介しておきます。
3-1 ハウリングを起こしやすいピックアップ
実はエレアコに使われているピックアップは、種類によって「ハウリングの起こしやすさ」に大きな違いがあります。
簡潔に言ってしまうと、
①コンデンサーマイク
②ピエゾピックアップ
③マグネティックピックアップ
の順にハウリングを起こしやすい傾向にあります。
理由は簡単です。
まず、3種類のピックアップはそれぞれ「ボディ内の空気音」「ボディの表板」「弦」の振動を音に変換しているんでしたね。
そして想像するとわかりやすいと思いますが、「この順番でスピーカーの音がよく伝わりやすい」からです。
アコギのボディというのは小さな音を増幅するための形をしているので、ボディ内で増幅された音を真っ先に拾ってしまうコンデンサーマイクはハウリングにとても弱いです。
逆にスピーカーの音が再び弦を震わせるのは大変なので、その分マグネティックピックアップはハウリングに強いということですね。
3-2 デュアルタイプは音作りに注意
あまり多くはないと思いますが、もしもコンデンサーマイクとピエゾもしくはマグネティックの「デュアルタイプ」を使っている方は、コンデンサーマイクのミックスに気を付けてください。
具体的には、ピエゾ、マグネティックのほうを音作りのメインにしてコンデンサーマイクは「空気感を添える」くらいの音量にしておくということ。
エレアコの音作りについてはいずれ詳しくご紹介する予定ですが、ひとまずコンデンサーマイクのミックス量を上げすぎてもあまりいいことはありません。
せっかくだからマイクの空気感をたくさん出したい気持ちはとても分かりますが、少し控えめくらいにしておくのがおすすめです。
まとめ
さて今回はエレアコとハウリングについての内容でしたが、ひとまず具体的に
よくあるハウリングの原因
・音量の上げすぎ
・エレアコとスピーカーが近すぎる
・エレアコとスピーカーが向かい合っている
ハウリングの対策
・音量を下げる
・スピーカーから離れる
・サウンドホールにふたをする
・低音をカットする
・ピッキングを練習する
ということだけ抑えておいてください。
良かったらハウリングの起こる仕組みなども覚えておくと、いざというときに自分でハウリングに対応できるようになれると思います。
エレアコは初心者の頃はどうしてもハウリングや音抜けの悪さに悩まされてしまうことも多い楽器ですが、その分バンドでも弾き語りでもソロギターでも、とてもいろいろな魅力がつまった楽器だと思うので、自分のペースで少しずつ音との付き合い方を模索してみてくださいね。