「ギターのピッキングは手首を振ってスナップを効かせてするもの」というのはよく聞く話ですよね。
ギター教則本などで基本的なフォームとして1度は見たことがあると思います。
ところが、実際に練習してみると全然思ったように手首が動かなかったという方も多いのではないでしょうか。
というのも、この「手首のスナップを使ったピッキング」というのは実はとても誤解されやすい上に難しい技術なんです。
今回は手首を使ってギターを弾くというのは一体どういうことなのかから始めて、手首を使ったスナップの練習方法までを一緒に見ていきましょう。
1.手首を使ってギターを弾くって?
手首を振ると言われると、多くの人は手をパーにした状態で左右に振るような様子をイメージしますよね。
田村も初心者のころ「手首を使ってギターを弾く」というのはまさにこの動きを使うことだと思っていました。
しかし、実際に手首だけを横に振り動かしてみるとどうでしょう。
きっとほとんどの人は想像よりも手首が動かないと思います。
このように、手首の横向きの可動域というのは本来とても狭いものなんです。
つまり何が言いたいかというと、コードストロークやピッキングの大部分は手首ではなく「腕」を中心にして行うということ。
手首を振るピッキングというのは、実は文字通り「手首を振り動かす」という意味ではないんです。
とくに初心者の皆さん。
まずは、手首は「それほど大きく動かすことは出来ない部分である」ことを知っておいて下さい。
無理に動かそうとすれば腕に無駄な力が入ってしまいますし、手首の力みは腱鞘炎の原因になってしまいます。
しかし、それではギターを弾く上での「手首を使う」とは一体どういうことなのでしょうか。
今回は「手首の回転」と「手首のスナップ」という2つの動きに注目してギターのピッキングを見ていきましょう。
2.手首の回転とピッキング
手首の回転というのは厳密に言えば手首ではなく肘(ひじ)を動かす動作のこと。
やり方はとても簡単で、まずは手首を軽く内側に曲げて、その状態でぶらぶらーっと振るだけです。
この動きは遠くから見るとたしかに手首を振っているように見えますよね。
しかし、よく見ると手首自体はほとんど動かず、ただ腕(肘から先)が回転するように動いているだけなんです。
そしてこの動きこそが一般的に言う「手首を振ったピッキング」の動きだと思って下さい。
ギターを弾いていて「もっと手首を振って」などとアドバイスされた場合は、意外と手首ではなく肘から先を回転させる動きが足りないことが多いです。
3.手首のスナップを効かせるってどういうこと?
手首のスナップとは手首を柔らかくしなる鞭(むち)のように使うこと。
スナップは手首を素早く振ってピッキングのスピードを上げることが目的です。
手首を力で速く動かすというよりは、腕の先についた手首を鞭のように「しならせる」イメージを持ってください。
日常生活の中で言えば、手についた水をパッパとはらう動きや、勢いよく釣竿を振って、釣り糸を遠くまで飛ばそうとするような動きに近いです。
手首を動かそうと思って手首に力を入れてしまうと、返って手首がガチガチに固定されて動かなくなってしまうので、柔軟性を活かしたスナップは出来ません。
手の水をはらう時に手首に力を入れる人はいませんよね?
ギターのスナップではとにかく「手首の力を抜く」ことを意識しておきましょう。
4.スナップの練習方法
さて、それではいよいよスナップを使ったピッキングを練習していきましょう。
とは言っても、初めからスナップだけを意識してギターを弾くとゴールを見失ってしまうことが多いので、ここでは「アクセント」に注目しながら少しずつ練習をしていきます。
※アクセントとは演奏の中で目立つ強い音のこと。
4-1 スナップでアクセントをつける
まずは1小節のなかで1回だけ、手首のスナップを意識して音を強くしてみましょう。
※例えば4拍子で2拍目のダウンピッキングだけを強くするなど。
注意して欲しいのは、強く弾く1ストローク以外のピッキングは全て同じ音量で保つということ。
スナップの前後で音の強弱がバラバラになってしまわないように気をつけて下さい。
アップピッキングが混ざるととても難しくなるので、まずはダウンだけから始めるのがおすすめです。
また、今回はスナップ練習なので、アクセントの位置ではあくまで「手首のスナップを効かせるだけ」で強弱をつけます。
指に力を込めたり腕を強く押し込んで音を強くしてしまわないように気をつけましょう。
4-2 アクセントの位置を移動しよう
それが出来たら、次はスナップでアクセントをつける位置を4小節のなかで色々な場所に変えてみてください。
例えば3拍目のダウンピッキングだけ、4拍目裏のアップピッキングだけ、など色々なパターンで1回だけ好きな場所に強拍をいれる練習してみましょう。
この時もやはり、アクセント以外の音の強弱にムラがつかないように、丁寧に練習して下さいね。
4-3 アクセントの回数を増やしてみよう
スナップでアクセントをつけることに慣れてきたら、次は自分のやりやすいところからでいいので、スナップアクセントの回数を2回、3回と増やしてみましょう。
例えば、「2拍目と4拍目を強く弾く」などがやりやすいです。
これもいろんなパターンを試しながら練習してみて下さい。
4-4 アクセントの連打をしてみよう
最後に一番難しいのが全ての音を右手にスナップを効かせて弾くというもの。
簡単に言えばアクセントの連打ですね。
ただこの場合はアクセントというよりも、ここまで掴んだ「スナップの感覚」を使って自然にバッキングするイメージのほうが良いかもしれません。
力加減とコントロールがとても難しいですが、ここまでの練習を参考にしつつ、何度もトライしてみて下さい。
とにかく、手首に力が入ってしまわないように注意です。
まとめ
さて、今回はギターのピッキング技術の中でも「手首とスナップの使い方」についての記事でした。
後半でご紹介したスナップの練習方法はとてもテンポよく簡単に書いてしまっていますが、実際には右手の正確なコントロールが必要なとても難しい練習です。
「基本」とされることも多いスナップピッキングですが、田村としては、ピッキング技術の中でも一二を争う難しさだと思っています。
なのですぐには出来なくても焦らずに、フォームの確認や脱力の練習なども思い出しながら少しずつ出来るようになっていきましょう。
他の記事でもなんども書いていることですが、ピッキングで大切なのは「正しい弾き方が出来ること」ではなく、「色々な表現が出来ること」です。
ピッキングの基本編についてはこの「手首とスナップ」の記事が最後の予定ですが、今後も色々な切り取り方で、より具体的な場面やフレーズでのピッキング方法をご紹介する予定なので、ぜひお楽しみに。