ギターの右手ピッキングを脱力する練習方法とコツ

ギターのピッキングでは右手の脱力が大切。

これはギタリストの間では非常によく耳にする言葉ですが、皆さんはその意味や練習方法をご存知でしょうか。

初心者の頃の田村は、脱力の意味も練習方法もあまり分からずに

・弦がよく切れる
・右手の人差し指が痛くなる
・音がギシギシとノイジーになる

などといった問題に長らく悩まされていました。

今回はギターの右手ピッキングの脱力の意味を確認した後で、一緒にピッキングの脱力と改善に取り組んでいきましょう。

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1.ギターの脱力はなぜ必要?

ギターを弾く時、右手を脱力してピッキングするメリットは大きく分けると

・ピックの引っ掛かりを防ぐ
・音が太く抜けやすくなる
・弦が切れにくくなる

の3つです。

どれもギターにとって大切な要素ばかりなので、右手を脱力する意味について順番に見てみましょう。

1-1 ピックの引っかかりとは?

ピックの引っかかりとは、脱力出来ずに固定されたピックが弦に引っかかって弦を大きく引っ張ってしまうこと。

大げさに言えば、一切しならないピックを真横に動かして、弦をいつまでも弾かずに引っ張ってしまっている状態です。

初心者の人であればほぼ100%起こってしまう上に、自分では気づいていない場合がほとんどなので注意が必要です。

例えば、

・弦がよく切れる
・指が痛くなる
・アップピッキングの1弦で「ピキーン」という音がする
・ダウンピッキングよりアップピッキングの方が抵抗がある

という経験はありませんか?

1つでも当てはまる場合は、実はそれこそがピッキングで「引っ掛かり」が起こっている証拠です。

ピッキングのときに脱力を意識することで、この無駄な弦の引っ張り上げを防いでいきましょう。

1-2 音が太く抜けやすくなる

バンドでギターを弾く人なら一度は悩むことになる「音抜け」と「音の太さ」も脱力によって大きく改善することができます。

と言っても、普通に考えると「力を抜けば音も弱々しくなる」気がしますよね。

脱力で音が太くなるのは、

①脱力すると弦とピックの摩擦(悪い意味の擦れ)が減る
②ピックの力が弦にきれいに伝わりやすくなる
③純粋な弦の振動(音)だけがギターのボディにしっかり響く
④太い音が出る

というような仕組みです。

つまり、簡単に言ってしまえばピックの擦れによるギシギシしたノイズが減り、広く豊かな倍音が得やすくなるということ。

もちろん、この音抜けや音の太さはバンドだけでなく弾き語りやソロでギターを弾く人にとっても「説得力と芯のある演奏」につながる大切なものです。

脱力したピッキングを練習して、しっかりと魅力ある太い音を目指していきましょう。

※ピックの摩擦によるノイズがよく分からない方は「下手な人の弾くバイオリン」を想像してみてください。
ギターの場合は弓楽器ほどノイズが目立ちませんが、耳に痛いようなギラギラとがったアタック音はやはり心地いいものではありません。

1-3 弦が切れにくくなる

これは先ほどの「弦の引っ掛かり」とも強く関係することですが、右手を脱力することでギターの弦は驚くほど切れにくくなります。

と言うのも、脱力するとピックが柔らかく動くようになり、弦にかかる負担を大きく軽減出来るから。
同じ音量でギターを弾く場合でも、弦にたまるダメージの大きさが全く違ってきます。

田村自身も弦がすぐ切れることに悩んでいて脱力に救われたので、同じように悩む方にはぜひ習得して欲しいです。

弦切れについて詳しく知りたい方は一度「ギターの弦が切れる原因と対策のすべて」という記事へどうぞ。

2.脱力の感覚とピックの持ち方

さて、言葉で「右手は脱力してピッキングするように」と言うのは簡単ですが、実際にどうすれば脱力したギターピッキングが出来るんでしょうか。

本格的な練習に入る前に「脱力の感覚をつかみやすいピックの持ち方」と「脱力の感覚」を確認しておきましょう。

2-1 脱力しやすいピックの持ち方

脱力とピッキングの感覚をつかむ練習では、まずピックはやや浅め(ピックが1cmくらい飛び出て見えるくらい)で持つようにしてください。

ピックを浅く持つことで、深く持つ場合と比べてピックがしなりやすくなるので、ピックが「弦に押し負ける」感覚をつかみやすくなります。

さらにこの時、ピックをつまむための力は思いっきり脱力しておいてください。
と言うより、もはや「つまむ」意識もないくらいで大丈夫です。

ピックはギリギリ指に挟まっていて、もう少し指の隙間を開けたらピックが落ちてしまうくらいの力加減で十分です。

実はこれは脱力したピッキングを練習する上で1番大切なこと。
上達のポイントは「大げさなくらいの脱力」です。

※慣れてきたら少しずつ自分の好きな持ち方でも脱力できるように練習してみましょう。

2-2 ピックが弦に負ける感覚

「ピックが弦に負ける」という表現はあまり耳慣れないかもしれませんが、これは簡単に言えば「ピックが弦に押し負けて柔軟にしなり、動く状態」のこと。

弦をピックで押し込んでギターを弾くというよりも、弦の上でピックをすべらせるような感覚です。
※ただし、1本1本の弦をきちんとピックで捉えていないと音の粒立ちまで消えてしまいます。

ギターのピッキングでいつもピックが弦に負けている必要はありませんが、初めのうちはこの柔らかに脱力したピッキングがおすすめです。

コードストロークのピッキングでは一本一本の弦ごとにピックが押し戻されては進み、押し戻されては進みを繰り返すイメージを持ちましょう。

3.右手とピッキングの脱力練習

さて、ではいよいよ脱力した状態で一緒にコードを鳴らしてみましょう。

ピッキングの脱力はダウンとアップで難易度がかなり違ってくるので、まずは易しいダウンピッキングから見ていきますね。

3-1 ダウンピッキングの脱力練習

それでは早速ですがピックの脱力を意識しつつ、好きなコード(CかGあたりがおすすめ)をゆっくり一回ジャラララ〜ンと鳴らしてみて下さい。

この時に、

・決して指に力を入れない
・手首を動かすよりも腕で動かすイメージ
・ピックが常に弦と平行になるように意識する
・ピックは弦を撫でるように少し寝かせて当てる
・ピックの先の方ではなくやや深い部分(先から5mmくらい)を弦に当てる
・1番端のフレットの上でフレットに沿って真っ直ぐピッキングする
・フレットにピックを軽く押し当てるようなイメージ
・アルペジオのように1音1音を意識する

ようにしてみましょう。

注文が多くてすいません。
しかし、どうでしょうか、こうすると驚くほど小さな力で滑らかに音が鳴りませんか?

これが「弦の引っ掛かり」や「擦れ」がなく脱力できた状態で、本来ギターの音を出すのに必要な力です。

いつもよりヌルっとした手ごたえの、力のいらないピッキングが出来たなと思ったら成功だと言えるでしょう。
ギターの脱力ではこの右手の感覚をつかむことが1番大切なので、まずはダウンピッキングを何度もくりかえして、脱力の感覚を体で覚えてしまいましょう。

初めのうちはピッキングのスピードも焦って早くしないで「ゆっくり丁寧に」を心がけて下さいね。

高音成分が完全に抜け落ちて、太く丸くモッタリとした丸い音が出せるようになるまで何度も何度も練習しましょう。

3-2 アップピッキングの脱力練習

ダウンピッキングの脱力感覚をしっかりつかめたら、次は同じことをそのままアップピッキングでやってみましょう。

ポイントは全てダウンピッキングと同じなので、先ほどと同じように、ゆっくり、丁寧に、脱力したピッキング動作でお願いします。

どうでしょうか?
実はここですぐにダウンピッキングと同じくらい脱力出来る人はほとんどいないと思います。
きっとピックの動きが詰まったり、止まったりしてしまいますよね。

これがアップピッキングで多くの人がつまずく「ピックの引っかかり」です。
そしてこの引っかかりは、すでにご紹介したように百害有って一利無しの非常に厄介なもの。

ピッキングの速度は本当に気にせずにゆっくりで良いので、アップピッキングをダウンピッキングと同じくらい脱力してスムーズに出来るように練習してみましょう。

田村も、このアップピッキングの引っかかりを無くすのにはかなりの時間がかかりました。
しかしこのアップピッキングの脱力は、この先ギターを練習して行く上で本当に大きな一歩になる大切なものなので、何とか頑張って習得して下さい。

「ダウンピッキングは上手く脱力出来たのにアップピッキングは苦手」という方は、

・ピックと弦が平行になるようにする
・ピックが弦を撫でるように寝かせて当てる

というポイントがアップのときだけ出来ていないかもしれません。
なので、とくにこの2つを少し大げさに意識して練習してみるのがコツです。

3-3 ピッキングスピードを上げていく

さて、もう何となく皆さんも練習の方針が立ってきているでしょうか。

ゆっくりのダウンピッキング・アップピッキングが出来るようになったら、次はピッキングスピードを少しずつ上げてみましょう。

と言っても、キレッキレのスピードで腕を振り抜く必要は全くないので、さっきの弦の感覚を大切にしつつ、丁寧さと脱力感を保てるスピードでピッキングすることが大切です。

また、このときピッキングが手先だけになってしまわないように、腕や肩も上手く使えているかも確認してみてくださいね。

3-4 アップとダウンが混ざった練習

最後は仕上げとして、アップとダウンが混ざったフレーズを、自分の好きなピッキング位置、好きなピックの持ち方で弾けるように練習しましょう。

右手の脱力練習は時間がかかるものなので、自分のお気に入りの曲で、ゆっくり少しずつ練習するのがおすすめです。
ただ、ここまでにつかんだ「脱力」と「引っ掛かりのない右手」の感覚だけは忘れないで下さいね。

※練習になるように、ダウンアップ両方のピッキングが含まれていて、省略コードではない曲を選びましょう。初めはバラード調のゆったりとした曲がおすすめです。

まとめ

ピッキングにおける脱力のイメージはきちんと伝わったでしょうか。

この記事を通して、ギターのピッキングに本来必要な力がいかに小さいか、ピックが弦に引っかかる感覚や、それがいかに厄介かに気づいてもらえたら幸いです。

ひとまず今回の記事内容がある程度出来るようになれば、ギターの弦切れや指の痛みはかなり改善されるでしょう。

ギターの右手とピッキングについては他にも色々な記事を書いて行くつもりですが、今回のこの「脱力」はその全ての土台になるような大切な内容です。

ただ、ピッキングの良し悪しを考えるのは難しいことで、今回目の敵にしていた「引っかかり」も実は一つの表現として、わざと演奏に取り入れることができます。(例:スラップ系の奏法)

なので、田村が伝えたいのは「正しい奏法」というより、皆さんの演奏の幅を広げる気付きや観点です。
例えば脱力が出来ないよりも出来た方がいろんな表情の音でギターが弾けますよね。

逆に言うと、文を通して皆さんに伝えられるのはそれが精一杯で、そこからの練習についてはただ応援することしかできません。

この記事から何か一つでも発見があったなら、それをぜひ大切に、自分なりに育ててやって下さい。

きっとそこには知らないうちに皆さんの個性が盛り込まれて、自分らしい音としてギターから出てくるはずです。

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