1から分かる防音の基本と対策

透過損失の説明防音

いっそ自分の部屋を防音できたら良いのにな…

きっと誰もが一度はこんな風に考えたことがあるんじゃないでしょうか?

例えば、

・楽器や歌を気兼ねなくやりたい
・シアタールームやリスニングルームが欲しい
・外の音がうるさい
・壁が薄くて話が筒抜けになってしまう
・自宅レコーディング用のスタジオが欲しい

など、防音は色々な場面で大きな問題になってきます。
とくに外からのうるさい音は生活する上で大きなストレスになってしまいますよね。

田村自身も「アコギの練習音を外にもらさないにはどうすれば良いだろう」ということについて、かれこれ5年くらいは悩みながら試行錯誤していました。

今回はそのノウハウを踏まえて、防音についての基本知識から防音の目的に合わせた対策までを詳しくご紹介します。

1.防音の3つの意味とは?

防音には簡単に言えば3つの意味(目的)があります。

1-1 音の出入りを防ぐこと

家で楽器を演奏する時に隣の部屋に音が響かないようにしたり、逆に外の音が入ってくるのを防いだりするのは、防音の中でも1番多くの方が悩んでいるもの。

単に「防音」と言えば、この「音の出入りを防ぐ」という意味を指す場合が多いです。

1-2 余分な音を出さないようにすること

ドアの開け閉め(戸当たり)の音や、歩いたときの足音などをクッションやカーペットでなるべく小さく抑えるというのも実は防音の中に含まれます。

これはお隣さんへの配慮の場合もありますが、次に紹介する音の環境にも少し重なってきます。

1-3 音の環境を良くすること

少しイメージしにくいですが、室内でムダに声や音が響いてしまったり、音がはね返ってキンキンしてしまうというのも実は生活する上で大きなストレスの原因になるもの。

適度に音を吸い取ったり分散させたりしてこれを防ぐことも立派な防音です。

皆さんが必要としている防音に近いものはありましたか?
基本的なことを大切にしながら、防音について少しずつ学んでいきましょう。

2.防音の基本は4つの対策 |遮音・吸音・防振・制振

まずは防音の第一歩として皆さんに知っておいて欲しいのが、

・遮音(しゃおん)
・吸音
・防振
・制振

という4つの言葉です。

どれも普段の生活ではなかなか耳にしませんよね。
しかし、防音の目的に応じて1つ1つがとても大切な防音対策になります。

まずはこの4つの防音用語の意味から見ていくことにしましょう。

2-1 遮音の意味

遮音(しゃおん)とは「音をさえぎる」という意味。

例えば、壁や板を使って音をはね返し、音の通り抜けを防ぐことを「遮音」と言います。
なんだか防音そのものみたいな意味ですよね。

遮音材

遮音対策に使う材料のことを遮音材と呼びますが、この遮音材を選ぶときのポイントは「重い・硬い・分厚い」の3つ。
この理由はもう少し後で「音の性質」として紹介しますね。

遮音性能(透過損失)

また、壁などの遮音性能(どれくらい音をさえぎる能力を持っているか)は「透過損失」という言葉で表されます。

例えば、壁に向かって50dB(デシベル)の音を出したときに、壁を通り抜けて反対側に届いた音は30dBだったとします。
すると音は壁を通り抜けることで20dB分のエネルギーを失ったということになりますよね?

このときの遮音性能は、「20dBの音の通過を防げた」という意味で「透過損失20dB」と表します。

透過損失の説明

つまり透過損失とは、壁や板によって何dBの音を遮音できるかという意味で、「元々の音量 」から「透過音の音量」を引けば求められます。

※「デシベル(dB)」とは音量を表す単位のこと。

2-2 吸音の意味

吸音とは「音を吸収する」という意味。

例えばクッションなどの柔らかいものを使って音のエネルギーを吸収して小さくすることを「吸音」と言います。

ついつい「遮音が完璧なら吸音はいらないのでは?」と思ってしまいますが、実は遮音だけでは生活しづらい部屋になってしまったり、防音のコストパフォーマンスが悪くなってしまう場合もあるんです。

吸音材

さて、吸音に使う材料である「吸音材」を選ぶときのポイントは実はたくさんあります。
というのも、吸音はそもそも音を吸う仕組みや方法が沢山あるから。

例えば柔らかい布団やクッション以外に、

・硬い木の板
・有孔ボード(穴のあいた板)
・何もない空間

などを使った吸音にも大きな効果が期待できます。

逆になんとなく音を吸ってくれそうな素材が、実は全く吸音には使えないなんていう場合もあるので要注意です。

吸音性能(吸音率)

壁などの吸音性能(どの程度音を吸収してくれるのか)は「吸音率」という数値を使って表すことができます。

例えば、吸音材に向かって50dBの音を出した時に、反射して戻ってきた音が10dBだったとします。
すると40dB分は吸音材に吸収されたか、壁を通り抜けて戻ってこなかったということになりますよね?

このときの吸音性能は、「元々の音の80%は反射しなかった」という意味で「吸音率0.8」だと考えます。

吸音率の説明

つまり吸音率とは何%の音を反射せずに吸収・透過させられるかという意味で、「透過音と吸収音を合わせた音量」を「元々の音量」で割ってやれば求められます。

2-3 防振の意味

防振とは「振動が伝わるのを防ぐ」という意味。

例えば床や壁にマットやカーペットを敷いて、洗濯機やモーターが壁を振動させるのを防ぐことも「防振」です。
足音などもそうですが、壁や床が直接振動するとかなりの音が漏れてしまうことになりますよね。

2-4 制振の意味

制振とは「振動を弱める」という意味。

 

例えば振動している(する)板を両側からゴム板で挟んで振動を吸収してやることを「防振」と言います。
制振と防振はすこしずつ意味が違いますが、役割そのものは重なる部分も多いのであまり無理に区別する必要はないかもしれません。

簡単に言えば、「制振することで防振する」と考えれば良いでしょう。

3.自分で防音対策するのは難しい?

自分で部屋の防音対策をするのはよく難しいイメージを持たれていますが、実はそれほど身構える必要はありません。

例えば布団にくるまった時に声が小さくなったり、お風呂場やトンネルで音がよく響いたりという経験ってありますよね。
そのイメージさえあれば防音を考えることは十分できます。

ただし、「音の出入りを100%防いでやろう」と考えてしまうと防音の難易度は跳ね上がります。
実は完璧な防音というのは存在しないので、そこにこだわりだすと物理学や音波の世界に足を突っ込んで時間ばかり無駄にしてしまうことになりかねません。

効果の薄い防音対策をすすんでする必要はないですが、ひとまず「今よりも音の問題を改善しよう」くらいの気持ちでいましょう。
大切なポイントはこちらでしっかり説明するので安心して下さい。

4.部屋を防音する方法は大きく3種類

そもそもマンションやアパートなどで自宅の1室を防音する手段にはどんなものがあるんでしょうか?

もちろん本当は防音の目的によって細かい内容は色々変わってきますが、まずは無理やり大きく分けて見てみましょう。

4-1 部屋自体の防音性を上げる

防音の中でも1番安くて手をつけやすいのが部屋自体の防音性を上げることです。

例えば、ドア、壁、窓などのようにターゲットを決めて集中的に対策することで防音を進めていきます。

ただし、防音材料の選び方や使い方によってはせっかくの対策が「無駄な出費」に終わってしまうので焦りは禁物ですよ。

4-2 部屋の中に防音室を設置する

防音効果がかなり高いのが部屋の中にもう一つの部屋(防音室)を作るという方法。

しかし、市販の防音室は値段が高く10万円〜100万円くらいの予算にはなってしまいます。

防音室は自作するというのも一つの手ですが、最低限のDIY(日曜大工)スキルが必要になるのでなかなかハードルは高いです。
ただDIY素人の田村も最後には防音室を自作できたので、そのこともふまえて後で紹介しますね。

4-3 防音工事をする(部屋自体の防音室化)

値段としては最も高くついてしまいますが、1番確実なのがプロに依頼して部屋の防音工事をしてもらうというもの。

防音工事の最大のメリットは、自分の部屋の環境や、どんな風に防音室を使いたいのかに合わせて内装や防音のレベルをオーダーメイド出来るということ。

実は防音室は用途によって全く必要な防音対策が違ってくるので、予算に余裕があるのであれば1番おすすめしたい方法です。

5.部屋の音環境をよくする防音対策

さてそれでは次に、余分な反響音やフラッターノイズなどを抑えて「音の環境をよくする」ためには一体どうしたらいいのでしょうか。

やはりこれも場合によって少しずつ変わってきますが、まずは代表的な2つの防音対策をご紹介します。

5-1 適度な吸音をする

反響音がうるさい、高音がキンキンする、フラッターノイズがひどいなどの問題は全て吸音によって解決することができます。

まずは壁や天井などの吸音対策を試してみましょう。
例えば反響音が気になる部屋に布団を敷いてみると、それだけでもかなり余分な音を吸い取ってくれますよ。

5-2 音を拡散させる

「音の拡散」とは、簡単に言えば音をバラバラな方向に分けて反射するということ。

例えば中に物が少ない四角い部屋を考えてみましょう。
この場合、音は不自然にまとまったまま反射を繰り返すことになりますよね?

実はこれは反響音の不自然さから感じる不快感だけではなく、「定常波」や「共鳴」などのやっかいな現象にもつながってしまう問題なんです。

大きな家具を増やす、壁の表面を凸凹にするなどの工夫をすると音を自然に拡散することができるので、吸音と合わせて対策を考えてみましょう。

6.防音で失敗しないためのコツは?

さて、予算の関係でなんとか自分で防音したいと思っている方も多いと思いますが、自分でする防音対策には残念ながら失敗もつきものです。

ここでは最後に、その失敗を少しでも防ぐ方法を考えてみましょう。

6-1 オーソドックスな材料を使う

これは決して高価な防音専用の遮音材・吸音材を使えという意味ではありません。

ただ、しっかりと「防音効果がある」とされているものを材料に使うということ。
自分なりになんとか節約に努めることは大切ですが、最低でも必要な遮音・吸音の材料というのはやはり存在します。

節約のことを考えるとどうしても無料で手に入るものや安いものに惹かれてしまいますが、「簡単に、楽に、確実に作業できる」というのもとても大切なことです。

6-2 遮音は隙間なく

音をきちんと遮音したいときは、とにかく隙間を作らないことが大切です。

たまに「壁に買ってきた遮音材を立てかける」といった防音対策を見かけますが、多くの場合、天井の近くは数十センチくらいの隙間が空いてしまっています。
これだとせっかくの遮音材でも十分な効果を発揮できないので、もったいないですよ。

6-3 遮音と吸音を間違えない

これもたまに見かけるんですが、例えば壁一面に隙間なく吸音材を敷き詰めたとしても、壁の遮音性はほぼ変わりません。

もちろん、壁を通り抜ける音は吸音されて小さくはなるんですが、体感的にあまり変化がないように感じてしまうはずです。
「自分は音を吸い取りたいのか遮りたいのか」という遮音と吸音の使い分けはきちんと考えましょう。

6-4 とにかくやってみる

あまりにも知識ばかりつけて頭でっかちになってしまうと、何の防音対策にも手を出せないまま動けなくなってしまうことがあります。

そんなときは「扉の隙間を塞ぐ」など、とにかく安くて簡単に挑戦できる防音対策をやってみましょう。
実際にホームセンターや通販で材料を選んでみると、また一歩前に進めるはずです。

POINT

・防音とは音の発生と出入りを防ぎ環境を良くすること
・防音対策の基本は遮音、吸音、防振、制振
・とにかく自分に出来そうな対策から始めること

防音の全体像はなんとなく掴んでいただけましたか?

今まで蓄えた知識と経験をもとに田村もまだまだ色々な防音に挑戦していくので、一緒に部屋の防音対策を頑張っていきましょう。

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