ギターやエフェクターをアンプに繋いだとき、ジーーというノイズが混ざってしまって困ることってありますよね。
中にはチューナーでノイズごとミュートしたり、歪みエフェクターをOFFにしてその場をしのいだという方も多いかと思います。
しかし、そもそもこのノイズはどこで混ざってきてどうして出てしまうんでしょうか。
今回はギター・エフェクターボード・アンプの3つを通して、ノイズが混ざってしまう原因と、なるべくノイズを減らす方法について考えてみましょう。
0.まず知って欲しいノイズの基本(初心者の方へ)
そもそもノイズって何?という方に向けて、本編に入る前にノイズについて3つだけ簡単に説明しておきます。
0-1 ノイズはいらない音のこと
ノイズとは目的としていない電気信号のことを指す言葉ですが、簡単に言えば本当は出したくない余分な音のことです。
例えば何も弾いていない時にずっとアンプから変な音が出ていたら、それがノイズです。
今回はそれをなるべく減らすための記事です。
0-2 長いシールドはノイズの元
基本的にシールドケーブルやパッチケーブルはノイズに対して非常に強い構造をしています。
しかし、どうしてもシールドの長さが長いほどノイズの入る確率は高くなりますし音痩せもします。
3mなどであれば全く問題ないですが、10mなどになってくるとキャノンケーブルの導入も考えた方が良いでしょう。
0-3 使わないエフェクターは外す
細かい話は抜きにしても、エフェクターとシールドの接続はどうしても完全なものには出来ません。
なのでスイッチャー、ルーパーなどがない場合は、使わないエフェクターが少ないほどノイズのリスクも下がります。
なんとなくボードに入ったままの滅多に使わないエフェクターは一度思い切って外してみましょう。
1.ノイズの2大原因
アンプとギターを直接繋いでいる場合はノイズの原因も分かりやすいですが、エフェクターボードを組んで複数のエフェクターが関わってくるとどこでノイズが混ざっているか考えるのは難しいですよね。
ルーパーやスイッチャーなどを使う場合はなおさらだと思います。
そこでまず、ギターアンプやエフェクターから出るノイズの原因を大きく2つのタイプに分けてみましょう。
1つ目はギターやエフェクターループ内での接触不良から起こるノイズ、もう1つは外部からの電磁波によるノイズです。
2.4種類のノイズの特徴
1言でノイズとは言っても、ジーーッ、ビーーー!、ジーットットット…など色々な種類がありますよね。
実はアンプから出力されるノイズを聞くと、ある程度ノイズの原因を特定することができます。
2-1 実音の大きなノイズ
ビーー、ブーーなどブザーのような大きな音のノイズが混ざってしまう場合、ジャックや電源などどこかのパーツが破損しかかっている可能性があります。
この場合、ギターとエフェクターを順番に調べれば比較的簡単に原因が分かるでしょう。
2-2 電気っぽいジーーッというノイズ
これが1番よくあるノイズだと思いますが、このジーーッというノイズが出る場合、どこかでシールドやパッチケーブルのループに電磁波が侵入している(シールドの中で電気が起こっている)可能性があります。
細かな原因はいくつか考えられるので後ほど確認していきましょう。
2-3 周期性のあるノイズ
たまにうっかりしていると起こるのが、ジーーットットットッ、ジーーットットッ…という周期性のあるモールス信号のようなノイズです。
これはほとんどの場合スマホや携帯電話などの端末が原因です。
ついついアンプの上、エフェクターボードの中などにスマートフォンを置いたりしていませんか?
機材の設定を写真で撮っているなど、横に置いておきたい場合は機内モードで電波をOFFにすれば解消できます。
2-4 ラジオのような明らかな音声
何も弾いていないのにギターから音楽が流れている…という経験をされたことがある方はいますか?
稀にですがギターのピックアップが隣のスタジオのアンプの音やスピーカーの音声を拾ってしまう場合があります。
歪みエフェクターを切ればかなり小さくなりますが、こればかりは建物の構造的なものが原因だと言えそうです。
3.シールドに電磁波は入るの?
ここまで読んできて、この疑問を持った人は少なくないと思います。
確かに「シールドケーブル」という名前自体がギターの信号を電磁波から守るという意味で付けられていること思えば当然の疑問ですよね。
しかし実は98%の電磁波をカットできるシールドやパッチケーブルでも、使い方によって内側に余分なノイズを作ってしまう可能性は十分にあるんです。
そのキーとなるのは「円を描く形でシールドを使用する」というケーブルの使い方。
特にエフェクターのループ、余ったシールドなどが大きな輪っか状になっている場合は要注意です。
4.電源とループの使い方を確認
それではいよいよノイズが起こる原因を1つずつ潰していきます。
エフェクターのループ作りや電源など、機材の配置とシールド・パッチケーブルの使い方に問題がないかをチェックしてみましょう。
4-1 シールドと電源を整理する
まず確認して欲しいのが、アンプとエフェクター、エフェクターとギターを繋ぐ長い2本のシールド周りです。
シールドの下やすぐ近くに、電源タップやエフェクターの電源、その他電気系の配線がごちゃごちゃに重なってはいませんか?
例えば電源の上や真横でシールドの余った部分が輪っかになっていると、ノイズの大きな発生源になってしまいます。
シールドが輪っかになっていないとしても、なるべくシールドケーブルの近くを電源や電気ケーブルが通らないように周囲を整理してみましょう。
4-2 ボード内ループの組み方

エフェクターをスイッチャーなどとループを組んで使っている方は、「パッチケーブルの使い方」の確認をしてみましょう。
例えば上の図のルーパー(スイッチャー)とエフェクターをパッチケーブルで繋ぐ場合、皆さんならどうやって配線するか少し考えてみてください。
おそらく、半分以上の方は下の図のようにパッチケーブルを繋ぐイメージをされたと思います。

しかし、これは実はノイズが入りやすい接続方法なんです。
よく見るとスイッチャーとパッチケーブル、エフェクターの間で大きな輪ができてしまっているのが分かりますか?
ノイズを防ぐ上でループの輪の面積は小さいほど良いので、この場合は下のようなつなぎ方のほうが理想的だと言えるでしょう。

ループのパッチケーブルは常にペアで考えたり、結束バンドや紐などでまとめる習慣をつけると良いかもしれません。
4-3 センドリターンのループ
アンプでセンドリターンを使うという方も注意が必要です。
先ほどのエフェクター部でのループと同じで、センド・リターン用の2本のシールドが広がって輪になっていないかを確認してみてください。
センドリターンのシールドも結束バンドなどで軽くまとめておくと良いでしょう。
4-4 ヘッドアンプのトランスに注意
アンプの上にセンドリターンのエフェクターを置けば楽なのでは?と考えたことがある方もいると思いますが、これもノイズの原因になってしまう場合があります。
というのも、アンプヘッドには「トランス」と呼ばれる電圧変換器が組み込まれていて、これが強めの電磁波を出しているからです。
トランスはヘッドアンプの電源接続部分のすぐ側にある場合が多いので、もしどうしてもエフェクターを置く場合は電源と反対側に置くようにしましょう。
通常はこれを考慮してセンドリターンのジャックは電源と反対側に付けられていますが、センドリターンのシールドもあまりトランス部には近づけない方が無難です。
5.ギターとシールドのチェック
ここまでの対策でノイズが無くならなかった場合は残念ながらエフェクター、パッチケーブル、シールドのいずれかの状態が良くないということになります。
まずは最も断線、接触不良の多いギターのジャックとシールド2本をチェックしてみましょう。
5-1 ギターとアンプを直接つなぐ
まず普段ギターとエフェクターボードをつないでいるシールドをアンプのinputに直接つないでみて下さい。
この時点でノイズがあるようなら、アンプとギターのそれぞれのジャックで少しシールドを回してみます。
この時バリバリという「ガリノイズ」が出る場合はジャックの接触が少し悪くなってきているということです。
(電気的な接点が変わることで起こるノイズ)
ただしシールドのプラグ付近が断線しかけている場合も似た現象が起こってしまうので、もう一本のシールドでも同じことを試してみてください。
片方のシールドでだけノイズが出る場合はシールド、両方で同じようにノイズが出る場合は機材にノイズの原因があると判断できます。
5-2 ギターのジャックが怪しい場合
ギターのジャックが怪しい場合は接点復活剤や湿らせた綿棒を使ってジャックを掃除してみましょう。
軽度の接触不良であれば、ジャック交換までしなくてもこれだけで接触が復活することが多いです。
5-3 シールドが怪しい場合
シールドケーブル内での接触不良がありそうな場合は、まずプラグ部分のカバーを外して芯線とプラグのはんだ付けが取れかかっていないかチェックしてみてください。
はんだが取れかけていたら、その部分を再度はんだ付けして修理してしまいましょう。
そうでない場合は断線(もしくはシールド層の破れ)箇所の特定や修理が難しいので、買い替えをおすすめします。
6.エフェクターとパッチケーブルのチェック
さて、ギターのジャックもシールドも大丈夫そうだという場合には、いよいよエフェクターボードの中でノイズの犯人探しをしていく必要があります。
これがなかなか面倒な作業ですが、少しずつ調べていきましょう。
6-1 全てのエフェクターをOFFにする
まず、全てのエフェクターを一度OFFにした状態でエフェクターボードをつないでみてください。
これでノイズが綺麗に消えた場合、パッチケーブルとエフェクターのジャックには問題がない可能性が高いです。
裏を返せばどこかのエフェクター内の回路、もしくは電源の調子が悪い可能性があります。
ループスイッチャーを使っている場合はループを全て切ってノイズが消えればスイッチャー自体には問題がないことがわかります。
ただし、歪みエフェクターがOFFになっている分ノイズも目立ちにくくなるので、少しアンプ側のボリュームを上げておくと良いでしょう。
6-2 エフェクターとパッチケーブルの掃除
全てのエフェクターをOFFにしてもノイズが乗っている場合は、パッチケーブルとエフェクタージャックの接触が悪くなっているかもしれません。
大きなボードだと一つずつ試すのは大変なので、いっそ全てのエフェクターのジャックを掃除するのが早くて楽だと思います。
掃除には接点復活剤や綿棒がおすすめです。
全部もやってられない!という方はパッチケーブルを触ってみて、ガリノイズが出るエフェクターを集中的に掃除してみましょう。
6-3 原因エフェクターを探す
エフェクター自体に原因がありそうな場合は、一つずつスイッチをONにして問題のエフェクターを探してみましょう。
もしそれでもよく分からない場合、最終手段として一つずつエフェクターをつないでチェックしていくという方法があります。(ループスイッチャーの場合は別)
具体的には、まずアンプに1番近いエフェクターだけをギターとつないだ状態でエフェクターを踏み、ノイズのチェックをします。
1つ目が大丈夫だったら、次は2番目のエフェクターを先ほどのエフェクターとパッチケーブルでつなぎ、同じようにチェックしてみます。
あとはこの作業をひたすら繰り返して、ノイズがどのエフェクターから混ざってくるのかを確認します。
6-4 ループスイッチャーのチェック
ループスイッチャーを使っている場合のチェックはもう少し簡単で、一つずつループの電源をONにしていけば原因のループが分かります。
ループ内にいくつかエフェクターがつないである場合は、そのループだけ一つずつチェックしてみましょう。
7.原因エフェクターの点検・修理・買い替え
原因となるエフェクターを見つけたら、すぐに買い替えが必要なのでしょうか?
ジャック掃除をしてもやはりダメな場合でも、なるべくそのエフェクターが使えるようにもう少しだけ調べてみましょう。
7-1 エフェクターを単体でつなぐ
まずはアンプとノイズの原因と思われるエフェクター、ギターを直接シールドでつないでみます。
これでノイズが消えた場合、ノイズの原因はそのエフェクターではないということ。
パッチケーブル、もしくは電源供給に原因があるかもしれません。
7-2 パワーサプライの見直し
たこ足配線のパワーサプライで電源を供給している場合は、それを見直せばノイズが減らせる可能性があります。
長方形のボックス型で、それぞれのエフェクターに安定した電源を供給するためのパワーサプライが楽器屋さんで売られているのでそれを導入してみるのも一つの手です。
もしも単一のパワーサプライが余っている場合は、少し面倒ですが問題のエフェクターだけ単一のパワーサプライに接続して再チェックしてみるのも良いでしょう。
7-3 やはりエフェクターが怪しい時は
それでもダメだという場合はエフェクターを修理するか買い換えるかを決める必要があります。
自分で少し機材をいじれる方は内部のジャックやはんだ付けを確認して交換するのも良いですし、難しそうだという場合は素直に買い換えるのが良いと思います。
8.便利なノイズリダクションとは
どうしてもノイズが残ってしまう、ノイズを早急に無くしたいという場合は「ノイズリダクション」という機能を持ったエフェクターの導入を検討してみてください。
ノイズリダクションとは電気的なノイズの成分を狙って、余分な信号を除去する機能のことを指します。
マルチエフェクターの中にはノイズリダクション、ノイズゲートなどの名前でこの機能を持っているものも多いので、マルチをお使いの方は一度探してみてください。
ノイズリダクションは程度の差はありますが「信号を削る」という仕組み上、音痩せを完全に避けることは難しいと思います。
ただ、最近ではほとんど原音との違いが分からず、ノイズだけをうまく除去したような音を出力してくれる製品もあるようなので、ノイズがひどい場合や突然のノイズ対策として十分導入の価値があるエフェクターだと思います。
・シールドは短く
・エフェクターは少なく
・電気ケーブルを散らかさない
・ループはペアでまとめて
・ジャック掃除はこまめに
・ノイズリダクションは便利
今回はエフェクターノイズに関してこの6点を押さえましょう。
歪みエフェクターを踏みっぱなしにする場合には特に厄介なノイズですが、実際いざ曲が始まってしまえばあまり気にならないことも多いですよね。
なので応急処置的にチューナーでミュートしたり歪みを直前までOFFにしておくというのも一つの手段だと思います。
田村もよく忘れてしまうのですが、スタジオやライブでのスマホは機内モードにするようにしましょう。