音楽の楽譜やコード譜面でよく目にするキー(key)や調ってどんな意味?
一見誰でも分かるようで詳しく分からないのがキーという言葉ですよね。
カラオケなどでキーという言葉を使ったことはあっても、きちんと意味を知らないという方は意外と多いと思います。
正確にイメージするのが難しい「キー」という言葉ですが、キーの考え方を知っていると、コピーや弾き語り、アレンジや作曲から音楽理論まで、様々なことに応用が効きます。
今回はそんな音楽のキーについて基本的なことから転調や音楽理論の話まで、詳しくご紹介します。
1.キー(key)とは
よく大切な言葉のことをキーワードと言ったり、解決のヒントや鍵となるもののことをキーアイテムと呼んだりしますよね。
あれはkeyという英語が鍵(=大切なもの)という意味なので、そこから来ているというのは皆さん何となく知っていると思います。
それと同じで、音楽や曲の中で言う「キー」とは、文字通り「鍵となる大切な音」のこと。
つまり「その音を基準に曲が組み立ててありますよ」ということを意味します。
例えば「key:C」と書いてある場合は、「Cの音を基準にしてメロディやコードが進んでいく曲」だということなんです。
Cキーって何キー?
ところで、突然「Cの音」と言われても「何の音だよ?」となる方もいますよね。
実はCとは普段よく耳にする「ドレミファソラシド」の「ド」のこと。

音楽では上の表のようにドレミファソラシドをアルファベットで呼ぶことも多いので、少しややこしいですがぜひ覚えておいてください。
Cキーの曲はドが基準
話を戻すと、つまり「key:C」の曲は「ドの音を基準にして作られている」ということだったんですね。
しかし、そうは言っても「基準にして曲が作られる」というのはイマイチ、イメージがわきにくい言葉です。
それについては次の項目からもう少し詳しくみていきましょう。
2.キーとスケール
さて、ここからは「スケール」という言葉も少しずつ混ぜながらキーの説明をしていこうと思います。
スケールとは簡単に言えば「ドレミファソラシド」のようなもので、曲を作るために使われる音を並べたもののことです。
音楽を作るときは基本的にこのスケールの音を元にしてメロディやコードを作っていくので、スケールは音楽の土台のようなものなんですね。
そしてこの「スケール」とキーにはとても深いつながりがあります。
スケールの仕組みとキーの音
実はスケールはある音を基準として1音決めて、そこから決められた音程で音を並べることで作られます。
そして、その「スケールの基準になっている音」こそが「曲のキー」です。
つまり、音楽や曲のメロディとコードを作るために必要なのがスケールで、さらにそのスケールを作る基準になる音が曲のキーというわけですね。
※「スケールって何かよく分からない」という方は良かったら次に進む前に「音階って何?メジャー・マイナースケールの意味とは」も合わせて読んでみてくださいね。
スケールがしっかり分かると、この先の話がグッと分かりやすくなります。
3.メジャーキーとマイナーキー
ここまでの内容で「key:C」と書いてある曲は「ドの音を基準にしたスケールで出来た曲」だということまでは分かるようになりましたね。
さて、スケールには曲の明るい・暗いによってメジャー・マイナーの2種類があり、キーの音を頭にくっつけてCメジャースケール、Dメジャースケールなどと呼びます。
実はこれはキーにも当てはまって、キーも曲のスケールのメジャー・マイナーによって「メジャーキーとマイナーキー」に分かれるんです。
キーとスケールのメジャー・マイナーは同じ
つまり、その曲がCメジャースケールで出来ているならキーはCメジャー、Dメジャースケールで出来ているならキーはDメジャーとなります。
また、使われているスケールがマイナースケールの場合は、キーの後ろに小文字のm(マイナーと読む)を付けてCmキー、Dmキーという風に表します。
基本的にメジャーキーの「メジャー」は書かれないので、「key:C」ならCメジャーキー、「key:Cm」ならCマイナーキーという意味です。
※Cメジャーキーは単にCキーと呼ばれます。
4.音楽のキーと調の関係は?
さてここでもう一つ知っておいて欲しいのが「調」という言葉。
調というのは「スケール」や「キー」を日本語に変えたようなものだと思ってください。
スケールは日本語にすれば「音階」に近く、「調」はどちらかと言えばキーに近いと言えるでしょう。
日本語の音名イロハと長調・短調
日本語や五線譜でキーを表すときは、メジャーキーのことを長調、マイナーキーのことを短調と呼びます。
また、長調・短調ではドレミファソラシドのことを「ハニホヘトイロハ」と呼ぶ慣習があります。
つまり、Cメジャーキーはハ長調、Eマイナーキーはホ短調になるということ。
ドレミとABCとイロハと、いい加減に統一して欲しくなってきますね。
さらに五線譜のト音記号の横にある「演奏者に調を伝えるための記号」のことを「調号」と呼びますが、実はこれにはとても沢山の種類があります。
この調号についてはまたの機会にご紹介しますね。
5.キー変更と転調とは
さて、「キーや調について全く知らなかった」という方でも「キー変更」や「転調」という言葉はどこかで聞いたことがあると思います。
転調とは「調が転じる」こと、つまり調が変化することを意味するので、日本語としては「キー変更」と似たような言葉ですよね。
しかし、この2つの言葉は場面によって使い分けることが多いです。
皆さんは音楽の中でキーや調を変更するのってどんな時だと思いますか?
5-1 キー・調を変更する2つの場面
実は音楽で曲のキーを変える場面は大きく分けて2つあります。
1つは弾き語りやカラオケ、バンド演奏などで、ボーカルの人の声の高さなどに合わせて「曲全体のキーを変える」場合。
これは転調とは言わず「キー変更」と言われます。
そしてもう1つは、曲調の変化をつけるために「曲の途中でキーを変える」場合。
これは「転調する」と言います。
少し紛らわしいので、この2つの使い分けを順番に見ていきましょう。
5-2 弾き語りなどでのキー変更
カラオケによく行く人なら、カラオケのリモコンについている「♯・♭」などのボタンで「曲の高さ」を変えたことってありますよね。
実はあれは曲のキーに♯、♭をくっつけてキーを変えているんです。
よくカラオケで高音が出ないときに「このキーは無理だ」なんて言い方をしますが、これはそこから来ているんですね。
つまり弾き語りやカラオケのキー変更は、歌いたい曲を自分の歌いやすい音域にするために行います。
曲のキーを下げると全ての音が下がる
スケールの考え方が分かっている方には当たり前の話ですが、曲のキーを変えるということは、曲中の全ての音がキーと同じ音程だけ平行移動するということ。
つまりキーを半音下げると、メロディやコードの音に全て♭がつくということなんです。
例えば、「原曲が女性ボーカルでEキー(Eメジャースケール)の曲」を男性が歌おうとした場合、高くて歌えないこともありますよね。
そんな時はその曲のキーをCに下げてやると、全ての音が2音ずつ下がるので「メロディがそのまま低くなったように感じて」とても楽に歌えたりします。
つまりキーというのは「曲の高さ」のようなものでもあるんですね。
キー変更はコードでも同じ考え方
このキーの変え方はコードでも全く同じことが言えます。
曲のキーをEからCに変える時は、曲中のコードもE→C、F#m7→Dm7など純粋に2音ずつルート音を下げるだけで大丈夫です。
(ルート音とはコード名の頭についている大文字の音名のことで、m7、9などの部分は変更不要)
ただし、即興で自由にキーを変更するにはある程度コード理論的な知識と、楽器の鍵盤やや指板上の音把握が必要になるでしょう。
5-3 曲中での転調
曲中での転調は純粋に音の高さだけが変わる転調と、メジャーキーとマイナーキーも入れ替わる転調があります。
転調はただ単に「曲中にキー変更が起こる」だけなので、実際行われていることはキー変更と同じです。
カラオケで例えれば、歌う前にキーを変えるのではなくて、曲の歯切れのいいタイミングで♯や♭のボタンを押すようなものですね。
ただし、転調は曲の雰囲気や盛り上がりをガラッと変えるために行われるので、それだけ覚えておきましょう。
6.キー・転調とコードの音楽理論
さて、ここからは少しだけ、転調とコードの音楽理論についてみていきましょう。
応用的ですが、ここがわかると音楽の幅も大きく変わってきますよ。
6-1 キーと調とダイアトニックコード
キーや調が分かればスケールが分かったのと同じように、実はキーが分かれば「その曲で使われる7つの基本コード」を知ることもできます。
この7つのコードは音楽理論では「ダイアトニックコード」と呼ばれている大切な考え方です。
例えばダイアトニックコードが分かれば、ある曲がCキーだという情報を聞いただけで「その曲にはC、Dm、Em、F、G、Am、Bdimが使われているのかも」という予想が一瞬で立てられるということ。
これは作曲やアレンジ、耳コピーや即興のアドリブ演奏など、とても広い範囲の音楽に応用が効く知識です。
7つまで使うコードを絞った後は、さらに「カデンツ」という音楽理論からコードを使う順番まで予想をつけることが可能です。
こういったコード理論についての知識を持っておくと音楽をまた違った方向でも楽しめるようになるので、よかったらコード理論についても一緒に学んでいきましょう。
コードの最も基本的な仕組みについては、「コードの仕組みとルート音の意味」という記事でご紹介していますので、興味がある方はぜひご覧ください。
6-2 転調の耳コピー
さて、耳コピをダイアトニックコードからしている方の場合、転調のコード進行を拾うのは厄介ですよね。
とくにメジャー・マイナーの転調などはコードの予想がほとんど立たないので、理論からコピーするのはかなり慣れた人でないと難しいと思います。
なので、スケールに合わないコードに出会ったら、まずは素直に耳で拾う練習をしてみましょう。
そしてコピー後に、「どんな進行だったのか」を考えるようにすると、少しずつ音楽理論で分かるコード進行も増えていくと思いますよ。
(理論に慣れてくるとそのうちセカンダリードミナント系のコードや裏コードも拾えるようになるので)
耳の力を使った最も基本的な耳コピの方法については「耳コピの練習方法とコツ |初心者から完コピまでのやり方」という記事にまとめています。
初心者の方でも、読むだけで実際の耳コピの流れが体験できるように工夫して書いたので、ぜひ合わせてご覧ください。
まとめ
今回は曲の高さとスケールを表すキーと調についての記事でした。
キーの仕組みや考え方自体はいたってシンプルなんですが、実際に弾きこなして使いこなすためには沢山の知識が必要になります。
コード理論やスケール、鍵盤や指板のことが少しずつ分かるようになると転調なども自由に行えるようになるので、焦らず少しずつ知識を増やしていって下さい。
この辺りからは座学よりも実際にピアノやギターなどの楽器に触れて、曲を弾いて確かめてみることが非常に大切になってくるので、習うより慣れよの精神でバリバリ練習していきましょう。