ギターフレットの交換とすり合わせの違いから料金・時期まで

ギターのフレットがある程度すり減ってしまうと、音がビビる、チョーキングが引っかかると言った不具合が出てきます。

そんな時に必要になるのが、プロのリペアマンによるフレットの修理。

しかし実は、同じフレットリペアでもギターの状態によってその修理内容や料金が大きく変わるのをご存知でしょうか。

今回は、そんなギターフレットの「すり合わせ」と「打ち直し(フレット交換)」という修理について、詳しくご紹介します。

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1.フレットのリペアってどんなもの?

ギターのフレットはいわゆる消耗品で、長く弾いていると必ず磨耗して弦のビビりや音詰まりが出てくるので、そのつど修理する必要があります。

しかし初めてのフレットリペアの場合、誰にどんな内容で頼めばいいのか、どれくらいの値段なのかなど、色々と分からないことも多いですよね。

まずはフレットリペアについての基本的な情報を簡単に確認しておきましょう。
※どれも詳細は後から説明していきます。

①フレットリペアの種類

フレットのリペアには大きく分けると「すり合わせ」「交換・打ち直し」という2つの種類があります。
すり合わせは今あるフレットにヤスリがけをして削り均一に戻すこと、交換は古いフレットを外して新しいものと取り替えることです。
フレットの一部分だけを交換する「部分交換」と呼ばれるリペアもあります。

②リペアは誰に頼むの?自分でもできる?

フレットのリペアは専門のリペア工房(ギター工房)さんにお願いするのが一般的ですが、最近では楽器屋さんでもリペアコーナーにリペアマンさんがいて修理してくれる場合があります。

フレットリペアは自分でもできるリペアですが、ギターのためにはプロのリペアマンさん(出来ればギター工房の方)に頼むのがおすすめです。
田村が自分ですり合わせた際のお話も後で紹介しますね。

③フレットリペア料金の目安

フレットリペアの料金はおおよそ

すり合わせ…1万円前後
交換…2〜5万円

くらいです。
※フレット交換の値段に大きく幅があるのは「全交換」と「部分交換」の違いや、ギターの装飾の有無などによってかなり料金が変わるため

④フレットの修理期間の目安

フレット修理にかかる時間はリペア工房の混み具合やギターの状態によっても大きく変わりますが、普通は1週間〜4週間ほどです。

田村がよくお願いするリペア工房さんは予約から4週間弱で直してくれることが多いです。
(実際に預けるのは3週間くらい)

⑤フレットの寿命や交換時期は?

フレット修理をする時期の目安は2〜3年ですり合わせ、数回すり合わせてフレット高が低くなったら交換(5〜8年)くらい。

ただ、田村は1番よく弾いていた時期には半年に一回すり合わせをしてもらっていたので、これはあくまでも一般的な目安だと思ってください。
ギターがビビる・音詰まりする場合には一度診てもらいましょう。

さて、フレットリペアの大筋が見えたところで、ここからはすり合わせ・フレット交換についての詳細や自分での診断方法、フレットを長持ちさせる方法などについても詳しく見ていきましょう。

2.フレットのすり合わせ

「フレットのすり合わせ」とは、すり減ってしまったフレットに合わせて全てのフレットにヤスリがけをして、均一に戻す作業のこと。
つまり、全体的にフレットを低くすることで修理を行います。

すり合わせのリペア内容にはネック調整(ネックの反りを直すこと)も必ず含まれるので、場合によってはこれだけでも劇的にギターの弾き心地が改善されます。

フレット交換とすり合わせの関係は?

すり合わせの説明を聞くと「フレットが低くなるならフレット交換の方が良いんじゃないか」、「弾き心地が悪くなるんじゃないか」と心配される方も多いと思いますが、そんな事はありません。

むしろギターのリペアでは「フレットすり合わせ数回」の後「フレット交換」するという流れの方が一般的です。

フレットのすり合わせは職人の腕前によって大きくギターの演奏性が変わる大切なリペアなので、なるべく腕の良いリペアマンを探しましょう。
また、後述しますがギターの状況によってはフレットの「部分交換」という手段もあります。

フレットすり合わせの料金と期間

工房によって異なりますが、フレットすり合わせにかかる期間は1週間〜2週間ほど、料金は1万円前後とみておきましょう。

3.フレットの交換(打ち直し・打ち替え)

フレットの交換は別名フレットの打ち直し・打ち替えなどとも呼ばれる作業で、フレットそのものを交換する作業のこと。

フレット交換には全てのフレットを打ち直す「全交換」と、一部のフレットをそのまま残す「部分交換」の2種類があります。
※どちらも「ネック調整とすり合わせ」込みのリペアです。

3-1 フレットの全交換

フレットの全交換は、指板に打ち込まれているフレットを全て外して、新しいフレットに打ち替えること。

フレット交換の作業工程にはネック調整とフレットのすり合わせも含まれていて、新しく打ち直したフレットをすり合わせて弾きやすい高さに調整します。

なのでフレット交換が必要なほど傷んでいたギターは、本当に生まれ変わったように弾きやすくなりますよ。

フレットすり合わせの限界と全交換

フレットの全交換は基本的に「もうすり合わせでは対応できない」という限界の状態になると行われます。
どれだけ多くても5回もすり合わせや部分交換をすれば、フレット高が低くなりすぎて全交換が必要になるでしょう。

また、フレット交換は非常に細い溝に打ち込まれているフレットを抜き差しする作業なので、ネックや指板への負担も大きく、そう何度も頻繁に行える作業ではありません。

弦の錆びなどに気をつけて大切に扱っているギターであれば、少なくとも5年以上は全交換の必要はないと思いますよ。

フレット全交換の料金と期間

フレットの全交換には、2〜4週間程度の期間と、4万円前後の料金が必要なので、すり合わせと比べると少し覚悟が必要なリペアです。
ギターのネックの横側(指板の縁)に装飾が入っている場合はさらに値段が上がることが多いです。

3-2 フレットの部分交換

フレットの部分交換は、「周りより極端にすり減ってしまったフレット」だけを交換してすり合わせを行うこと。

例えばアコギなどで、圧倒的にローポジション(1〜5フレットくらい)を使うことが多い人の場合は、ローフレットのみ激しく磨耗していて他は全然すり減ってないなんてことが良くあります。

この場合、極端にすり減ったローフレットに合わせてすり合わせを行うと、全く磨耗していないハイポジションのフレットまで大きく削る必要が出て来るので非常にもったいないですよね。

部分交換はこれを防ぐために、大きくすり減った1〜4フレットや1〜6フレットのみを交換して、全体とすり合わせることで、今あるパーツを無駄なく沢山残すことができます。

また、フレットに弦が強く衝突して傷(打痕)がついてしまった場合にもフレットの部分交換が有効です。
現実的にはフレットリペアで1番よく行われるのがこの「部分交換」でしょう。

もちろんですが、部分交換もネック調整とすり合わせ込みの作業ですよ。

フレット部分交換の料金はお得

フレットの部分交換の期間は2〜4週間ほどで全交換と同じくらいですが、修理料金は2万円〜3万円で済む場合が多いです。
(フレットを全て打ち直すのと比べて、フレットの値段など1万円ほど安い)

お得なリペアなので、もしフレットの傷み具合が「部分交換できる状態」であればリペア工房の方から提案してくれると思いますよ。

4.必要なフレット修理の診断

さて、それでは実際に皆さんのギターにはどのリペアが必要なんでしょうか。

ここからはギターのフレット診断方法として3つのフレット状態をご紹介しますので、自分のギターフレットを見てどんなリペアが必要そうか簡単に確認してみましょう。

①すり減りが浅い・深く均一

まず、フレットのすり減り方が浅い場合や、深くても1フレットからハイフレットまで比較的均一に削れている場合。

この場合は「フレットのすり合わせ」及び「ネック調整」だけでの修理が可能です。
ただ、すり合わせるとあまりにもフレットが低くなってしまう場合はフレット全交換が必要になるかもしれません。

②一部分のフレットだけが深く削れている

次に、一部のフレットだけが深く削れてしまっている場合。

この場合は無理にすり合わせると「きれいなフレット」までたくさん削ることになるので、深く削れた部位のフレットだけを新品に交換して打ち直し、さらには全体をすり合わせることになります。

つまり、よく使うフレットだけが深くすり減ってしまった場合、リペア内容は「フレットの部分交換」になるでしょう。
※もしもリペアマンさんにフレットのすり合わせや全交換を勧められた時は、部分交換での修理が出来ないか聞いてみても良いと思います。

③全交換が必要な場合は?

最後に、フレットが限界まで深く磨耗してしまっていたり、すでに何回かすり合わせ修理を行なっている場合。

この場合は最終手段としてフレットの全交換を行います。
裏を返せば、多少の磨耗やすり減りで初めから「フレットの全交換」に至ることはほとんどないと言えるので、少し楽に捉えておいて下さいね。

④とりあえず相談しよう

フレットのリペアは自分でする場合を除けば悩むより近くのリペア工房さんに持って行ってみるのがいいと思います。

診断自体は無料でしてくれるところが多いと思うので、まずは一度ギターを持ってリペアショップを尋ねてみましょう。

※見た目ではほとんどフレットがすり減っていないのに音詰まりやビビリが出る場合は、「弦がビビる原因とビビりを直す方法」という記事がお役に立てるかもしれません。

5.ギターリペア工房と楽器屋さん

ギターの修理は、基本的に専門のギター工房(リペア工房)に任せるか、楽器屋さんに所属するリペアマンさんに任せるかの2択です。
※ギターを購入したお店からメーカーの工場に送れることもあります。

正直どちらが良いのかは、それぞれのリペアマンさんの腕前次第ですが、田村なら大切な修理ほどリペア工房さんに依頼します。

これは決して、楽器屋のリペアマンさんを悪く言いたい訳ではないんですが、やはり圧倒的な経験値の差がある場合も多いです。

例えば、田村がずっとお世話になっている、とあるギター工房は、30年近くの歴史や数万本のギターリペア歴があるリペア工房です。
ここではフレット交換などの基本修理から、ネック折れなどの複雑な修理まで全てを扱う設備と技術があります。

仮にギタークラフト・リペアの専門学校を出て間もない新入りさんでも、工房のオーナーから学び受けつぐ技術は多いはずです。

一方で、これも田村がよく利用する楽器屋さんのリペアコーナーは、設備的にかなり小さく、できる修理も限られています。
となると、大きな修理はギターを楽器屋さんの外にある工房に郵送する必要が出てくるので、時間もかかります。

やはり、リペアに出すほどの大切なギターは可能であれば建物丸ごとリペア工房の、職人肌なリペアマンさんにお願いしたいのが田村の本音です。

大切なギターの初めてのリペアはどこにお願いしても多少不安なものなので、自分が1番信頼できそうなリペア先にお願いするようにしましょう。

6.フレットの寿命と交換時期の目安

フレットの寿命や、交換・すり合わせが必要になる時期というのは本当に人によって異なります。

例えば、毎日少しずつ練習を行う人の場合は、

・2〜3年でフレットすり合わせ
・5〜8年でフレット交換

くらいが目安だと思います。

しかし、たまにしかギターを弾かない人の場合は、10年近くたってようやくすり合わせなんて事もあるでしょう。
逆に田村の場合はたくさんギターを弾いていた時期には半年に一回ペースですり合わせをお願いしていたこともあります。

フレットのすり減り方は練習量やピッキングの方法、弦の状態などによっても大きく変わってくるので、時期を気にするよりは、「気になったらリペアで診てもらう」方が良いです。

リペア工房は相談や診断だけなら無料でやってくれるところが多いので、交換時期かなと感じたら勇気を出してギターを持ち込んでみましょう。

フレットのすり減りを少しでも防ぐには?

まず1番大切なのは「錆びた弦で練習しない」こと。

錆びた弦は表面がヤスリのようにザラザラになってしまうので、演奏のたびにフレットをすり減らせてしまうことになります。
弦の錆びについて気になる方は「ギターの弦の錆びによる影響とその防止対策」という記事も合わせてどうぞ。

次に右手のピッキングをなるべく脱力すること。

お世話になっているリペアマンの方にうかがったところ、これもフレットを長く使うために大切な要素のようです。
ピッキングの脱力について詳しくは「ギターの右手ピッキングを脱力する練習方法とコツ」という記事で紹介しています。

7.フレット交換は自分でもできる?

フレット交換やすり合わせを自分でするというのは、ギターリペアを1つの趣味として取り組むならとても楽しそうですよね。
田村も自分でギターリペアを出来る方ってかっこいいと思いますし、正直憧れです。

しかし、リペア料金を浮かせたい、節約したいなどの理由であれば、素直にプロに頼むことをおすすめします。
ここまででも書きましたが、フレットというのはギターにとって非常に重要なパーツなので、安易に素人が触らない方が良いんです。

とくに「フレット交換」は、おそらく初めて自分でやってきちんと仕上がるほど甘い技術ではないと思います。
※リペアマンさんが言うには最悪、指板の割れや、剥離など取り返しのつかない事になるようです。

料金的な面でも、自分でする場合はフレット交換やすり合わせに必要な工具を揃える必要が出てくるので、技術や仕上がりを無視しても決して割安とは言えません。

なので、ギターのリペア自体に興味がある、やってみたいという場合でなければ、自分でフレットをいじるのは止めておきましょう。

もし趣味としてフレット交換をしてみたい方は、いわゆる「ジャンク品」と呼ばれるような安いギターで練習するのがいいと思います。
すり合わせについては「ギターのフレットを自分ですり合わせた方法 |予算2000円」という記事も参考にどうぞ。

まとめ

おそらくこの記事を読んで下さっている方は、これから初めてギターのフレットリペアを考えている方だと思います。

色々不安な部分もあるかと思いますが、まずは地域のリペア工房を軽く調べて、直感でギターを持ち込んでみましょう。

実際にギターを持って行ってみると、話しているうちにリペアマンさんの気質や、設備の大きさ、そして自分のギターにどんな修理が必要なのかまで分かってきます。

この下見診断の段階で、ここはダメだと思ったら、丁寧に断って他を当たれば良いですし、信頼できそうな人達だと思えたのならそのままお願いしましょう。

フレットは小さなパーツではありますが、フレットとネックを綺麗に仕上げてもらったギターは、本当に生まれ変わったように弾き心地が良くなります。

また、信頼できるリペアマンさんとの出会い自体も、ずっとギターをやって行く上でとても大切なこと。

ぜひ良いリペアマンさんを見つけて、ギターをしばし休ませてやって下さいね。

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