ギターを練習していると、ふとした時につい悩んでしまうのがピックの種類です。
演奏感覚や音がピックによって違うことは分かっても、何がどう違うのかをしっかりと見極めるのはとても難しいもの。
今回はピックの音や演奏感が種類によってどう変わるのか、どうやって選ぶのが良いのかについて、筆者自身も改めて再検証しながら解説しました。
1.ピックとは

ピックとはギターを演奏するときに使う小さな三角形の道具のこと。
ほとんどは100円ほどで買えるものですが、ギターにとっては「楽器の一部」「体の一部」と言ってもいいほど大切なものです。
2.ピックの種類(形)

ピックの種類は形によって大きく4つに分けられます。
①正三角形に近い「トライアングル」②細身の三角形をした「ティアドロップ」③とても小さい「ジャズピック」④少し特殊な「サム/フィンガーピック」
まずはこの代表的な4つのピックについて、それぞれの特徴を見ていきましょう。
2-1 トライアングル(おにぎり)

トライアングルピックは正三角形に近い形で、通称「おにぎりピック」とも呼ばれます。
ずんぐりとしていて指や弦に触れる部分が広いので、ピックを持ったときにしっかりとした安定感があり、低音豊かな力強い音を出すのが得意です。
しかし、ピックが指にがっしりと固定されやすいので、細かい演奏や複雑な演奏は少し苦手とします。
ギターソロやブリッジミュートなどの演奏ではティアドロップよりややコントロールが難しくなりますが、低音の力強さは魅力的です。
トライアングルピックは音にまっすぐな迫力が欲しい方におすすめです。
2-2 ティアドロップ(スタンダード)

ティアドロップピックは、その名の通り形が涙(ティア)の粒(ドロップ)のように見え、スタンダードピックと呼ばれることもあります。
トライアングルピックより少し幅が狭くなる分、指の中で小回りが効きやすく、高音に広がりのあるジャキっとした音を得意とします。
色々な奏法に対応しやすく人気のあるピックですが、ピッキングに慣れるまでは指の間ですべってしまいやすいピックでもあります。
筆者は長年このピックを愛用していますが、トライアングルより弱くなってしまう低音を差し引いても、きれいな高音と高い演奏性は魅力的です。
ティアドロップピックは多くの方におすすめできますが、とくにピック1つで繊細な表現、色々な表現をこなしたい方におすすめです。
2-3 ジャズピック

ジャズピックはティアドロップピックを一回り小さくしたような形で、主にエレキギターに使われるピックのこと。
ティアドロップとよく似ていますが、指の中でさらに小回りが効き、音色は少し軽い(低音の弱い)方にシフトします。
単音のフレーズはヌルヌルとピックを動かせてかえって違和感を感じるくらい弾きやすいのですが、幅の広いコードバッキングや2弦同時のブリッジミュートなどは他のピックよりもかなり難しく感じます。
正確に弦を狙ってピッキングするスキルも必要なので、やや玄人(くろうと)向けのピックだと言えるでしょう。
2-4 サム/フィンガーピック

サムピックとフィンガーピックは指先にスッポリとハメて使う指弾き用のピックです。
このピックは主に「フィンガースタイル」や「ソロギター」と呼ばれる演奏ジャンルで使われてきたものですが、最近は「弾き語り」でサムピックを目にすることも増えてきました。
あえて他のピックと比べるとすると、指に対して小回りがほとんど効かないので、繊細な演奏はとても難易度が高いです。
指弾き用のピックと区別するために、一般的なピックを「フラットピック」と呼ぶこともあります。
3.ピックの厚さ

ピックには同じ形でも様々な厚さのものがあります。
厚さに対する名前の付け方はメーカーによっても違うのですが、今回は説明のためピックの厚みをThin:0.3〜0.6mmMiddle:0.6〜0.9mmHeavy :0.9〜1.3mmと分類して音の特徴を見てみましょう。
3-1 Thin(薄い)

Thin(シン)ピックは薄くてしなりやすく、高い音をきれいに鳴らすのが得意なピックです。
アコギでの明るいコード演奏やエレキでのカッティングと相性がよく、ピックが柔軟なので初心者の人でも扱いやすいというのも大きな魅力の1つ。
ただし、低音の効いた太い音を出すのはやや苦手なので、ズンズンとした迫力のある演奏にはあまり向いていません。
3-2 Middle(中ぐらい)

Middle(ミドル)ピックは程よい厚さとしなりで、バランスのとれた音を鳴らすのが得意なピックです。
元のバランスが良いため音の変化をつけやすく、コード弾きやカッティングから太い音の単音まで幅広くこなせるオールラウンダーです。
ただし良くも悪くも「ピック自体の特徴」には欠けるので、色んな曲を弾き分けるにはピックに頼らない表現力も求められます。
3-3 Heavy(厚い)

Heavy(ヘビー)ピックは分厚くてほとんどしならず、野太い(低い)実音を出すのが得意なピックです。
ギターソロや重たい音のブリッジミュートではとてもかっこいい音を出すことができるのですが、広がりのある高音や「アタック音」と呼ばれるチャキッ!ジャキッ!っとした音を出すのが苦手なので、爽やかなコード演奏にはあまり向いていません。
ピックがしならない分演奏者側で柔らかくピックを動かす必要もあり、扱いは少し難しいピックです。
4.ピックの素材と材質

ピックの素材は有名なものからメーカー独自のものまで様々ですが、その材質は音や演奏感には大きな影響があります。
今回はピックの素材として代表的なセルロイド、ウルテム、ナイロン、トーテックス、金属、鼈甲(べっこう)のピックの特徴を紹介します。
※各ピックのリンクは厳選掲載していますが、Amazonでピックを探すのはまだまだ難しく、とくに1枚単位での購入は楽器屋さんが便利です。
5-1 セルロイド(プラスチック)

セルロイドはツルッとしたプラスチック系の素材で、ギブソンやYAMAHAからもセルロイドピックが販売されています。
バランスのとれた音と摩擦の少ないきれいなアタック音が特徴で、個人的には後ほど紹介する「鼈甲ピック」に一番近い音のピックだと思っています。
昔は人工的な冷たい音にも感じてしまっていたのですが、クセの少ない優等生なピックなので初心者の方はもちろん、幅広い好みの方におすすめできます。
5-2 ウルテム(ULTEM)

ウルテムは薄茶色で半透明のプラスチック系素材で、ウルテムピックはよく「爪に近い音のピック」とも表現されます。
キラキラときれいな高音と自然な響きの音が特徴で、筆者はウルテム素材のピックを愛用しています。
弦との摩擦は少し強めで、悲しいことに「高音がとがりすぎてあまり好きじゃない」という方も少なくありません。
ウルテムは薄く広がる高音が爽やかな印象の曲によく合い、とくにアコギ好きの方にはおすすめです。
5-3 ナイロン

ナイロンはクラシックギターの弦などにも使われるとても柔らかい素材で、ナイロンピックはとくにジムダンロップ(JIM DUNLOP)というメーカーの灰色のものをよく見かけます。
ウルテムより落ち着いた音ですが意外に高音の伸びがよく、アタック音が柔らかいことが大きな特徴です。
ハキハキとした演奏にはあまり向かないものの、初心者の方でもノイズが少なく丸みのある音(豊かな音)が出しやすく、「なんだか変わっている」という理由で食わず嫌いするにはもったいない素材です。
※ダンロップのナイロンピックは標準ですべり止め加工がされています。
5-4 トーテックス(TORTEX)

トーテックスはジムダンロップが販売するピックの素材で、亀のマークと背中のTORTEXの文字がシンボルです。
表面がサラサラとした少しめずらしい材質で、「中音域」が強く、柔らかであたたかい音が特徴です。
トーテックスは厚みのある音や優しい印象の音が好きな方におすすめです。
5-5 金属(スチール)

金属ピックはその名の通り金属(スチール/ステンレスなど)でできたピックのことで、ピック売り場では気になる存在です。
筆者は昔勉強のために購入したのですが、弦とピックの間でノイズが生まれてしまわないようにするのは至難の技で、まともに演奏しようとするとまずはノイズ防止に全神経を使います。
また、丁寧に演奏していても何かの拍子に弦や弦のコーティングを傷つけてしまう可能性は高いので、間違っても初心者さんにはおすすめしません。
5-6 鼈甲(べっこう)

鼈甲ピックは亀の甲羅から作られるピックのことで、値段は1枚1000円ほどとかなり高めです。
セルロイドピックとも近い質感の音ですが中音域に温かみがあり、値段に見合うだけのきれいでバランスのいい音がします。
音も演奏感も良くどんな人にもおすすめできますが、ピックの削れが早いうちは大切に、丁寧に演奏してあげるのが良いかもしれません。
(写真右はまだまだピックを持つ手が力んでいたころ、容赦なく弾き倒されて丸くなった元ティアドロップの鼈甲ピックです。)
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6.ピックの選び方
最後に、筆者おすすめのピックの選び方を簡単に紹介しておきます。
6-1 初心者の方向け
初心者の方で無難なピック、バランスの良いピックを選びたい方には、筆者からは「セルロイド系素材のティアドロップピック」をMediumとThinで1枚ずつ買うことをおすすめします。
初めの1枚からピッタリ自分に合ったものを選ぶというのは中々難しいので、ときには試すことから始めることも大切です。
セルロイドのティアドロップピックはクセが少なく色々な奏法に向いているので、まだまだこれから演奏スタイルが決まっていく方にピッタリです。
6-2 ピックに深くこだわりたい方向け
自分に合ったピックを探して悩まれている方には、一度「同じメーカー・素材のピックで複数種類のピックを揃えてみる」という買い方をおすすめします。
例えば、ギブソンピックならギブソンピックと決めて、ティアドロップのThin, Medium, Heavyを1枚ずつ、トライアングルのMediumを1枚で合計4枚買うと、「形と厚みによってどのくらい音が変わるのか」を自分でしっかりと確かめることができます。
もちろん気になったピックを順番に探していくというのも良いのですが、こうした「ものさしになる基準」を自分の中に作っておくと、長い目で見て「良いピック」に出会えるのが早くなるかもしれません。
もし今長く使われているピックがあれば、そのピックのシリーズで試すのがおすすめです。
ピックケースの中のボロボロのピックたちを見ていると、そもそも当時の筆者はピックの個性を引き出せていたのか、聞き取れていたのか、と少し苦い気持ちになります。
初めから全てを経験した上でギターと接することは誰にもできないのですが、この記事が少しでもピックに悩まれている方の参考になっていましたら幸いです。
今日は最後までお読みいただき、ありがとうございました。