2017年2月8日

ギター保管で弦を緩めるメリットとデメリット

ギターを保管するとき弦を緩める(緩めない)べきだという話は聞いたことがありますか?

きっと「両方聞いたことがあって混乱している」という方もいますよね。

実は保管時に弦を「緩めるべき・緩めないべき」という2つの意見は、ギターに限らずベースやウクレレなど色々な弦楽器で議論が飛び交っているテーマなんです。

また、「楽器屋さんのギターの弦は緩めてあることが多いので、緩める方がいいような気がする」というのも少し安易すぎるかもしれません。

今回は練習終わりにギターの弦を緩めるメリットとデメリットを通して、保管時のギター弦の扱い方をご紹介します。


スポンサーリンク


1.緩める・緩めない論争の理由

ギターの弦を緩めるかどうかで賛否が分かれているのは、「ギター弦の張力」が大きすぎるから。

というのも、実は弦を張った状態でギターのネックにかかる張力の大きさはエレキギターで40kg、アコギでは70kgほどだと言われています。

つまりネックは常に10kgの米袋4〜7袋分、牛乳パック40〜70本分もの負担がかかっているということ。
また、ギターを引っ張る弦自身にも同じ大きさの力がかかっています。

ギターのネックに米袋がぶら下げてあったり、大人の男性(平均およそ60kg)が上に乗っていることを想像すると、確かにものすごいダメージがありそうですよね。

今回はこの「張力」をテーマに、これらの負荷からネックや弦をどうやって守るかということについて「緩める派・緩めない派」両方の考えを見てみましょう。


2.弦を緩めるメリット

弦を緩めるメリットは、大きく分けると「ネックの反りを防ぐこと」と、「弦のテンションを守ること」の2つです。

少し詳しく見ていきましょう。


2-1 ネックの反りを防ぐ

弦を緩める大きなメリットはネックの順反り(変形)を防ぐこと。

というのも、ギターのネックは鉄芯の入った「木」で出来ているので、長い間40〜70kgもの大きな力を加えられると変形してしまうことがあるんです。

とくに、日本は「高温多湿」のいわゆる「木材が柔らかくなる」ような気候帯が多いため、ネックが張力に負けて順反りしやすいと言えるでしょう。

弦を緩めてネックにかかる張力を軽減すれば、ギターが順方向に反ってしまうリスクを大きく減らすことができます。

※アコギは反りやすいですが、エレキギターのネックは弦の張力に負けることは珍しいです。


2-2 弦のテンションを守る

弦を緩めるもう1つのメリットは弦が伸びるのを防いで、弦のテンションを守ること。

ギターを引っ張る数十キロの力はそのまま弦にもかかるため、弦は少しずつ引き伸ばされて演奏時のテンションも落ちていきます。

実は、張り替えたての弦のキラキラした音が少しずつ輝きを失うのは、このテンションの低下も大きな原因の1つ。
弦が伸びてくると、倍音が弱って音抜けが悪くなる、弾き心地が変わってしまうなどの弊害があります。

弦を緩めておけば、「保管中に勝手にギターの弦が伸びてしまうのを防げる」というのは嬉しいメリットですよね。
とくに、巻き弦独特のコイル感については、弦を緩めるかどうかによってかなり持ちが変わってきます。


3.弦を緩めるデメリット

弦を緩めるデメリットは、「そもそも張力の変化自体がギターや弦の負荷になってしまう」というもの。

例えば毎日練習して弦を緩める場合、ギターのネックでは半日おきに数十kgもの張力が変化することになりますよね。

確かにネックへの張力による負担は軽くなりますが、これは決して「ギターに優しい」と言える状態ではないです。

実際に緩めてもらえると分かりますが、弦を緩めるとネックは少し反り返るように変形(逆反り)するので、ギターの接合部、弦のサドル・ナット部分への目に見えないダメージは避けられません。

この「張力の大きな変化」によるネックへの負担が弦を緩めるデメリットです。

また、少し後で紹介しますが「メーカーが緩めなくてもいいと言っている」場合もあります。


4.楽器屋さんが弦を緩める理由

楽器屋さんで試奏をしたことがある方は知っているかもしれませんが、基本的に日本の楽器屋さんではギターの弦は緩めて保管してあります。

また、緩める度合い・程度も一般に比べると大きく、弦がダルダルになるまで緩めます。

これは、楽器屋さん特有の

・弾く頻度が低い
・とにかくネックを良い状態で保ちたい

という2つの理由からです。


4-1 弾く頻度が低い

まず楽器屋さんが弦を緩める一番の理由はこれだと思います。

例えば、1時間に一回必ず誰かが試奏するようなギターなのであれば、楽器屋さんでも弦は張りっぱなしにするでしょう。

しかし、試奏の場合は1日に一回あるかないか、もしくは次にギターが弾かれるのは1週間後や1ヶ月後かもしれませんよね。

このように楽器屋さんでは次に演奏されるのがいつになるか全く分からないので、例え数ヶ月そのままでも良いように、試奏が終わるごとに弦を緩めています。


4-2 ネックの状態維持

楽器屋さんが弦を緩めるもう1つの理由は「ネックを順反りさせるわけにはいかない」からでしょう。

実は、ネックの反りはリペアショップなどではなくても自分で直すことができます。

しかし、ネックの反りを直すために使われるネジ巻き(トラスロッド)は回せる回数に限界があるので、新品の場合お店があまり勝手に回すわけにはいかないんです。

またネックへの負荷が非常に大きい熱による「ネックリセット」などももちろんできません。

なので、「商品を絶対に順反りさせない」ために、毎回かなり大幅に弦を緩めているのでしょう。


5.「緩めないのが標準」のメーカーもある

これはどういうことかというと、「うちのギターは弦が張った状態を基本に設計されています。なので、弦を緩められると返ってギター本来のバランスが崩れてしまうので、緩める必要はありません。」とメーカーが公言している場合があるということです。

田村の知る限りでは例えばアコギがメインのメーカーTaylor(テイラー)と、エレキがメインのメーカーFender(フェンダー)は保管時に弦を緩める必要はないとのことです。
※Fenderの場合は「緩めても半音下げくらいでいい」という記述もあった記憶があります。

こればかりは設計やメーカーの方針にもよると思うので、他メーカーでむやみに参考にする必要はありませんが、どこの誰とも知らぬ人の考えではなく、ギターメーカー直々の意見というのは信頼がおけます。

ちなみに田村は毎日弾くアコギも滅多に弾かないエレキも一切弦は緩めず、クラシックギターだけはダルダルまで緩めてあります。


6.弦の緩め方

では実際に弦を緩める場合にはどのようにすれば良いのでしょうか。

弦を緩めるときのポイントをいくつか見ておきましょう。


6-1 均一に緩める

弦を緩めるときは、絶対に偏った緩め方をしないようにして下さい。

例えば、1〜3弦を大きく緩めて、4〜6弦を軽く緩めた場合、ネックがねじれてしまう可能性が高いです。
「ネックのねじれ」は順反りなどとは比べものにならないほど厄介なもので、リペアも高くついてしまい、そうなってしまっては本末転倒ですよね。

なので弦を緩める場合は全て半音下げ、全音下げ、ペグ1周分など、「緩め幅」決めておくと良いでしょう。

ダルダルに緩めてしまう場合は気にしなくても大丈夫です。


6-2 ギターを弾く頻度と弦を緩める目安

ギターにかかる力が毎日大きく変化しすぎるのはギターにとっても弦にとってもあまり良くありません。

なので、弦を緩めるときは

・毎日ギターを弾く場合「弦は緩めない、もしくは半音下げ」
・1週間に数回、休みの日だけギターを弾く場合「全音下げ」

くらいを目安にしても十分だと思います。

ギターを弾く頻度が不定期で月に一回あるか無いかという場合は、完全にダルダルになるまで緩めてしまっても良いでしょう。

とくにアコギ・クラシックギターの場合は「ふと気がつくと弦を張ったまま半年も経っていて、立派に反ったネックが完成してしまった」なんてことも珍しくないので気をつけてくださいね。


6-3 トラスロッドが無いギター

クラシックギターや、ネックの反りを調整するトラスロッドが付いていないギターの場合、1日の練習が終わったらこまめに弦を緩めておきましょう。

トラスロッドによるネックの調整ができない場合は、反ってしまったら最後、高い料金でリペアに出すしかなくなってしまうので、普通より少し大げさに緩めておく方が良いと思います。


7.最も注意して欲しいポイント

ギター弦を緩めるにしても緩めないにしても、1番注意してほしいこと。

それは「ネックの反り始め」を見逃さないことです。

本来、ギターというのは弦の張力にも、その変化にもあるていど耐えられる構造で作られていますし、張力のほとんどは「ネックを曲げる」方向には働きません。
※張力の大半はネックを「縮める」ような方向に働くため

しかしこれは、あくまで「ネックが反っていないとき」の話です。

一度何かの拍子にネックの反りが始まってしまえば、ギターにかかっている張力はどんどん「反りを悪化させる方向」に増していきます。

つまり、ネックを縮める方向にかかっていた力が、どんどんネックを曲げる方向にかかるようになってしまうということ。
この負の連鎖が始まってしまうと、いくら頑丈な木材とロッドを使っていても変形の防ぎようがないんです。

なので、「ちょっと反ってきたかな?」と思ったら早め早めにネックを調整してやってください。

ネックの反りは進行すると最悪ギターの指板や接合部が割れたり離れたりしますが、早期に修正してやればあまり問題ない「普通の現象」なんです。

田村はほぼ毎日ギターに触りますし弦は全く緩めていませんが、たまに思い出した時にネックの状態はチェックするようにしています。

弦を緩めない場合はとくに、1週間か2週間に一度くらい、ちらっとネックの状態を確認してやってくださいね。

また、反ってしまったネックの調整については「トラスロッドはNG?ネックの反りの原因と確認・調整の方法」という記事をご覧ください。


まとめ

最近のギターは自分でもネック調整が出来るので、大切なのは「反ったな」と思ったらその都度、こまめに気づいて調整してやること。

逆に微調整ができないギターの場合は、少し大げさに弦を緩めておいた方が良いです。

そして念のために言っておきますが、もし自分で調整が効かないレベルでギターが反ってしまった時は、絶対にリペアマンの人に見てもらって下さいね。

下手に自分で力を加えてしまうと、ネックとボディが浮いてしまったり、ジョイント部に亀裂が入ったり、取り返しのつかないことになってしまいます。

とは言っても、たまに注意してネックを見るようにすれば、実はそんなに神経質になるようなことでは無いので安心してください。

ネックを調整したり、弦の緩め幅を変えたりしながら、少しずつ自分のギターとの付き合い方を見つけて行きましょう。


スポンサーリンク
広告と関連記事(by google)