ギターの弦の錆による影響とその防ぎ方

メンテナンス

ギターを練習していると、避けては通れないのが弦の錆(さび)との付き合いです。

錆さえなければまだまだ使えるはずの弦も、ほんの一部分が錆びてしまって交換が必要になることは珍しくありません。

今回は弦が錆びてしまう原因と放置した場合のギターへの影響、そしてその予防方法について解説しました。

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1.弦が錆びる原因

弦が錆びる原因と錆びる速さ

弦の錆は空気中の酸素と弦(金属)が結びつくことで起こります。

この反応は本来とてもゆっくりなのですが、そこに塩分や水分、気温(暑さ)が加わると一気に錆びるスピードが速くなります。

弦は主に練習中についた汗と汚れ、夏の暑さ、そして一部海沿いの地域では潮風などによって錆びてしまうのです。

1-1 指先の汗と塩

ヒトの汗には塩分が含まれています。

そのため、例えポテトチップスなどを食べた後などでなくても指先には少しだけ塩が存在し、ギターを弾くとその塩が弦を錆びさせてしまいます。

夏になると気温が高くなり手汗(塩+水)をかいてしまうことも多くなるので、速ければ数時間から1日でうっすらと弦が錆びてしまうことも珍しくありません。

1-2 保管の環境

あまり触らないヘッド部分の弦が錆びてしまっている場合、その原因は保管環境にあるかもしれません。

弦は気温と湿度だけではなかなか錆びないので、こうした部分が錆びてしまったときは台所の油滴が飛ぶような場所にギターを置いていないか、潮風にさらされるような場所に置いていないか、一度確認してみてください。

2.錆によるギターへの影響

錆びた弦

「弦が錆びても我慢して使えば良いのではないか」と思ってしまうこともありますが、弦の錆はギターに対して

①フレットをすり減らせる
②音程を狂わせる
③音色と演奏感を悪くする

という3つの大きな影響を与えます。

2-1 フレットがすり減る

すり減って一部が削れたフレット

錆びた弦は、演奏するたびにまるでヤスリのようにギターのフレット(指板の間にある金属の仕切り)を削ってしまいます。

フレットがすり減ると「弦のビビり」といってそのフレットから「ビヨーン」という間の抜けた音が鳴るようになってしまい、これを直すには「削れたフレットに合わせて全体のフレットを低く均一にする」というリペア(すり合わせ)が必要になります。

弦の錆を放置すると、結果的にフレットの寿命を大きく縮めてしまうのです。

2-2 オクターブチューニングが狂う

12フレットのチューニングのズレ

弦の錆がひどくなると、張力のバランスがくずれて「オクターブチューニング」というチューニングが合わなくなります。

オクターブチューニングというのは開放弦(フレットを押さえていない状態の弦)の音と、同じ弦の12フレット(ちょうど開放弦の1オクターブ上)の音名をピッタリ合わせるというチューニングです。

例えば6弦なら開放弦の音がE、12フレットを押さえた音が1つ高いEになっていれば良いのですが、弦が錆びるとこのチューニングが合わなくなってしまいます。

つまり、“きちんとチューニングしていても”演奏中にピッチがズレる音痴なギターになってしまうのです。

2-3 音質と演奏感の悪化

フレットの上の弦が錆びてしまった場合、ギターの音に少しギシギシと軋んだような音色が混ざってしまいます。

また、錆びてしまった弦はすべりが悪くなるので、弦を弾くときの演奏感も大きく変わってしまいます。

なるべく早くからピッキングと音の感覚を養うという意味では、やはり弦は錆びていないに越したことはありません。

3.弦の錆を防ぐ方法

弦の錆を防ぐイメージ

弦を錆びさせないためには練習前に手を洗うこと、そして練習後には弦の裏表を拭いてあげることが大切です。

また、環境に応じてギターケースを活用したり、可能であればコーティング弦と呼ばれる錆びにくい弦やエアコンなどを上手く使うのもおすすめです。

3-1 練習前に手を洗う

ギターを演奏する前に手を洗うことで、手についた汗や汚れが弦についてしまうのを防ぐことができます。

簡単な方法ですが錆への予防効果は高いので、ぜひ習慣にしてあげてください。(水気はしっかりと切りましょう。)

3-2 弦の裏表を拭く

弦の拭き方

練習がひと段落したら、クロスで弦の表面と裏面をサッと拭くことで保管中の弦の錆を大きく減らすことができます。

丁寧に磨いたり何往復も拭いたりしなくても、一度か二度かるく拭くだけで充分です。

弦の裏側を拭く時は2つ折りにしたクロスをボディと弦の間にくぐらせ、そのままヘッド側までズリズリとずらしていけば簡単です。

実は演奏中の手垢や汚れは弦の後ろとフレットに溜まりやすいので、ぜひ裏側も一緒に拭いてあげてください。

3-3 コーティング弦を使う

コーティング弦のパッケージ

錆びの対策としては「コーティング弦」と呼ばれる“錆びにくい弦”を使うのもおすすめです。

コーティング弦はその名の通り表面に薄いコーティングをした弦のことで、コーティングの膜が汚れの付着や錆を防いでくれます。

これだけ聞くと音質のことが心配になってしまいますが、ほとんどの弦はコイル感や倍音が弱ってしまうようなことはありません。

細かな仕組みや寿命はメーカーによっても違うのですが、とくにElixir(エリクサー)という弦は一夏(3~6ヶ月)くらいはほとんど錆びず音もきれいなので、錆に悩んでいる方にはおすすめします。

ただしエリクサーは値段が高いので、常用するのは少しピッキングに慣れて弦が切れにくくなってきてからがいいかもしれません。

コーティング弦について詳しくは「コーティング弦の仕組みと寿命 |錆びない弦の比較」という記事で解説しています。

エリクサー弦についてはよければ「エリクサー(Elixir)弦の特徴とポリ・ナノ・オプティウェブの違い」という記事をご覧ください。

3-4 夏は冷房をかける

夏は練習中だけでも冷房をかけられると、それだけでとても強力な錆予防になります。

というのも、冷房は無自覚にかいてしまう手汗を減らし、部屋の温度と湿度も下げてくれるからです。

練習中のエアコン使用はギターにとっても良い面が多いので、よければ弦交換1回分、スタジオ1回分の料金を電気代に回すと思って検討してみてください。

3-5 ギターケースの活用

海沿いの地域で潮風を避けられない場合やジメジメとした梅雨には、ギターをこまめにケースにしまってあげるのもおすすめです。

湿気対策のためには出来れば湿度調整剤も一緒に入れてあげてください。

4.錆びた弦を復活させる方法

一度錆びてしまった弦を完全に元に戻すことはできませんが、軽い錆であれば潤滑剤(じゅんかつざい)で弾き心地を改善したり、錆落とし剤で応急措置をすることができます。

4-1 フィンガーイーズを使う

フィンガーイーズを使う様子

フィンガーイーズというのは、指と弦の摩擦を減らすための潤滑剤の1種です。

弦は表面が薄く錆びただけでも指やピックのすべりが悪くなってしまうのですが、フィンガーイーズはこの摩擦を大きく軽減してくれます。

ピッキングする部分の弦が錆びてしまったときは音色への影響もバカにならないので、通常弦を使われている方は持っておいて損はありません。

使用するときはほんの少量、弦になじませる程度で充分です。

※当たり前ですが弦に対してすべりの悪さを感じていない場合、全く使う必要はありません。

4-2 錆落とし/コーティング剤を使う

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一度錆びてしまった弦も、軽度であれば「錆び落とし剤」を使ってある程度復活させることができます。

有名なのは「String Life(ストリングライフ)」というコーティング剤で、こちらは弦の錆を分離させる(浮かせる)と同時に、弦の表面にポリマーコーティングの膜を作ってれるという優れもの。

錆びによって狂ったチューニングが元に戻ったりはしませんが、通常弦の錆対策としてはおすすめです。

※エリクサー弦に使う場合、コーティングのないプレーン弦(1弦や2弦など)を中心に使うことをおすすめします。


今でこそ錆に悩むことが全くなくなった筆者ですが、昔は何も知らずに錆びた弦をそのまま使っていた悲しい時期もあります。

筆者はそれによって大切なギターのフレットを大きく削ってしまっているので、皆さんは弦が錆びた時にはなるべく早めに新しい弦に交換してあげてください。

この記事が昔の筆者のように錆に悩んでいる方にとって、少しでも助けになれていれば幸いです。

ちなみに、夏はカバンの中にウェットティッシュやコンビニでもらったお手拭きなどを1パック忍ばせておくと錆対策に重宝します。

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