バシっとしたかっこいい音が出したいのに、すぐにギターの弦が切れてしまうのはどうして?下手だから?安いギターや弦だから?
これって初心者の頃に誰もが疑問に思うことの1つですよね。
かく言う田村も、昔はエレキギターの弦を最短1時間ほどでブチブチやっていた苦い経験があります。
あまりにもブリッジ付近でばかり弦が切れるので、当時はついギターのせいだと思い込んでいました。
また、よく耳にした話にこんなものがあります。
・ブリッジ付近で弦が切れるのはギターのせい
・手元で切れるのはピッキングのせい
・1弦2弦は細いからすぐ切れて当然
……それって本当ですか?
漫画じゃないですが、もしもタイムマシンが使えたならすぐに当時の自分にギターを教えに行き、その思い込みを訂正したい気持ちです。
だからせめてまだ間に合う皆さん、自らギターや財布を傷めてしまう前に「妖怪1弦ちぎり」の正体を探しに行きましょう。
1.ギターの弦が切れる場所で原因は違う?
いろいろ話を聞いていると「どうせ弦が切れるのはギターが下手だからなんでしょ」と思ってしまう人は多いようです。
しかし弦が切れる場所によって、実は少しずつ違う原因も考えられるのはご存知ですか?
弦が切れる原因としてよく聞くのは、
・ギター(ブリッジ)のせい
・弦のせい
・ピッキングのせい
の3つ。
また、弦が切れる場所を大きく分けてみると、
・ブリッジ
・ローポジション(低フレット)
・手元(ピッキング位置)
・ハイポジション(高フレット)
の4ヶ所があげられます。
その中でも、「弦がすぐに切れる」という人はブリッジ付近での弦切れが多くはないでしょうか?
今回は弦の切れる場所や原因ごとに、その対策を詳しく見ていきましょう。
2.ブリッジのせいで弦は切れるか
ブリッジで弦が切れるのは、もしかしてブリッジが良くないんじゃない?
あまりにもブリッジばかりで弦が切れるとそんな風に思えてきますよね。
田村もついつい「自分のギターは安いから弦がよく切れるのかもしれないな」と思っていたことがあります。
しかし、実はブリッジで弦を支えている「サドル」自体のせいでギターの弦が切れることは稀です。
2-1 サドルの形と弦切れ
ブリッジ部分での弦切れは、サドルの溝が尖っているほど起こりやすいのでは?
直感的に考えるとこう感じますよね。
例えばアコギやストラトキャスターの場合、サドル(弦が触れているパーツ)は丸みを帯びたものが多いですが、一方でレスポールなどは一見尖ったような見た目のサドルが使われています。
しかし実はこの要素はそれほど大きな原因ではないんです。
強いて言えばレスポールなどサドルの溝が深いギターは「弦ががっしり固定されてしまう」という意味でほんの少しだけ弦が切れやすいかもしれません。
2-2 サドルのバリ
サドルには稀に「バリ」が残っているため、そのバリのせいで弦を切ってしまうことがある。という話は聞いたことがありますか?
おそらくこのあたりの噂が、「ブリッジで弦が切れるのはギターのせい」という話に繋がっているんだと思います。
しかし、ギターのサドルの不備で弦がよく切れるというのは実質ほぼ無いと考えて下さい。
もちろん理屈の上では起こりうることですが、少なくとも田村やその周辺のギター弾きの間ではサドルにバリが残っていたなんて話は聞いたことがありません。
もしも普通の演奏をしていて頻繁に弦が切れるなら、それはもはや立派な不良品です。
皆さんが使用しているギターのメーカーはわかりませんが、ギターの命とも言えるブリッジのサドルにバリが残っているようでは、もうギターメーカーを名乗るのも恥ずかしいレベルです。
だからもし、田村のように「サドルにヤスリをかけて滑らかにしよう」なんていう考えを持っている方は、ギターを信じてもう少しだけ、待って下さい。
3.弦のせいで弦は切れるか
弦がよく切れるのは、自分が使っているメーカーの品質が良くないんじゃないか。
これもきっと初心者の人にとっては不安材料の1つですよね。
次に弦自体の問題によって弦が切れるのかどうかを考えてみましょう。
3-1 安いギター弦は切れやすい?
田村が初心者のころ持っていた疑問に「安いギター弦はやはり切れやすいのでは?」というものがあります。
これに関しては流石に一概には言えませんが、少なくとも500円程度するような有名なメーカーのものであれば、まずは安心して下さい。
具体的にはアーニーボール、ダダリオ、マーチン、ギブソン、エリクサー などの弦は不良の可能性はほぼ無いでしょう。
また1セット100円から200円程度の弦をお使いの場合は、弦が切れる場所に注目してみてください。
毎回ランダムな場所で弦が切れるようなら弦の品質がかなり低い可能性があります。
逆に毎回同じ場所で弦が切れている場合は弦自体の問題は少ないでしょう。
不安な場合は一度「定番」と言われるような有名メーカーの弦を使ってみるのがおすすめです。
エレキなら500円、アコギなら700円くらいで十分に良い弦が売っていますよ。
3-2 古い弦は切れやすい
これは当然ですが、長い間使った弦や張りっぱなしの弦は、弦が伸びたり錆びたりしてしまって非常に切れやすくなります。
とくに弦の錆びは弦の耐久性を大きく落としてしまうものです。
弦の寿命には限りがあるので、大切なライブ前などにはなるべく弦を交換するようにしましょう。
4.ピッキングで弦が切れる原因
「ピッキングが下手だと弦が切れやすい」というのは事実です。
しかし、どうしてピッキングのせいで弦が切れてしまうかが分からないと直しようがありませんよね。
ここではピッキングが原因で「ブリッジでの弦切れ」が起こる仕組みを見てみましょう。
4-1 弦を切る方法
突然ですが、弦交換でニッパーを忘れた時、皆さんなら何で弦を切りますか?
切らずに丸める派のあなたも、もはや伸び放題にしておくロックなあなたも少し一緒に考えてみて下さい。
どうでしょう?ハサミ、カッター、爪切り、ヤスリ、身近なものではこのあたりが使えそうですが、刃物はいかんせん刃こぼれしてしまいそうでもったいないですよね。
ヤスリに関してもかなり根気がいりそうですし、いざ切ろうと思うと中々切れないというのは皮肉なものです。
しかし実は本当は道具なんてなくても、「素手」で弦を切ることが出来るのはご存知でしょうか。
もちろん、リンゴを片手で潰せる人限定の力技などではありません。
これには「金属疲労」と呼ばれる金属の持つ弱点を利用します。
4-2 ギター弦の金属疲労
金属疲労とは、「金属の同じ箇所を何度も曲げたり伸ばしたりしていると、その部分が硬くなっていき、最終的には折れる」という現象です。
どうしても「硬い」=「頑丈」というイメージが湧きますが、曲げるたびに硬くなるヒモを想像して見て下さい。
柔軟なヒモは曲げても折れませんが、それがだんだんシャーペンの芯のように硬くなっていくとどうなるでしょうか?
もう想像に容易いですよね。
つまり仮にアコギの太い巻き弦であっても、根気よく曲げたり伸ばしたりしていれば2分もすると弦は「折れて」しまいます。
そしてこの時弦を曲げる角度が鋭ければ鋭いほど、より効率的に「金属疲労」を起こすことが出来ます。
4-3 ブリッジは弦の変形が大きい

ギターを弾く時の弦の変形を大げさに想像してみましょう。
弦がしなるとき、「折れ曲がるような変形をする」のは、
・ナット(ヘッド側のブリッジ的パーツ)
・ブリッジ
・ピッキング位置
の3ヶ所。
そしてこの中で1番鋭くて大きく変形するのは「ブリッジ」です。
こうしてみると弦の持つ性質と弱点、なんとなく分かって来ませんか?
つまりブリッジ部分で弦が切れる時、ブリッジは鋭い刃物のように弦を切るわけでもなければ、ヤスリのように弦を削ることもないんです。
弦に1番大きなダメージを与えているのはブリッジ自体ではなく、そこで起こる「変形」だったんですね。
そう考えると、ブリッジ付近で1番よく弦が切れるというのは実は当然のこと。
ただし切れる頻度があまりにも早いという方は後で一緒に対策を考えてみましょう。
ちなみに素手で狙った箇所を切るのはやや根気がいるので、ニッパーを忘れた時は家に帰ってからニッパーで切るようにして下さいね。
5.ローフレットやナットで弦が切れる理由
さて、先ほどの理屈で行けば弦が切れにくいはずのローフレットの上ですが、ここで弦が切れるという方も少なくないですよね。
おそらくローフレットでよく弦が切れるという方はアコースティックギターを弾かれる人やそれに近い練習をする人だと思います。
5-1 カポと弦
ギターを弾く時にカポタストという道具をよく使う方はそのフレットで弦が切れやすい傾向があります。
特にカポの締め付けをネジで調整できるタイプの場合、カポを強く締めすぎると弦に凹みやヨレなどのダメージを与えてしまうことになるので気をつけて下さい。
5-2 ローフレットの錆
アコギなどでローフレットを多用するフレーズをたくさん弾く場合は、その部分だけ早く弦の錆が進んでしまうことが多いです。
そうなると当然弦の耐久力も落ちて切れやすくなりますし、フレットを磨耗させてしまう原因にもなるので、錆が出てきたら早めに弦を交換するようにしましょう。
6.ピッキング位置で弦が切れる
田村はいまだにこの位置で弦を切ったことがないのですが、いつもこの部分で弦が切れるのはかなり不自然な力が働いていると考えられます。
例えば、ギターの弦の表面をどこかに強くぶつけてしまった、コインピックなどの金属系ピックを使っている、ソフトケースのポケットに重いものを入れている、などに思い当たる節はありませんか?
この部分でよく弦が切れるという方はピッキングと一緒に「弦に負担がかかるようなことをしていないかな?」というギターの扱い方も見直してみてください。
7.ハイフレットで弦が切れる
ここも先ほどと同じく滅多に弦が切れることはない位置ですが、チョーキングによるフレットの磨耗で弦が切れやすくなることはあります。
一度フレットが極端にすり減っていないか確認してみましょう。
8.ギターの弦切れを防ぐ方法
さて、ギターの弦が切れる原因はどうやら「変形」と「錆」の2つがメインになりそうですね。
ここではその2つをなるべく防ぐ方法を見ていきましょう。
8-1 弦の扱い方を知る
まずは、少しでも弦をいい状態で長く使えるように「弦の基本的な扱い方」を知りましょう。
「ギターの弦代を節約する方法 |長持ちのコツと安い買い方」という記事では弦の錆びを防ぐ方法など、弦を長持ちさせるための色々な知識を紹介していますので、ぜひこの記事と合わせて読んでみてくださいね。
面倒な方は、とにかく「練習前に手を洗うこと」と「練習後に弦を拭くこと」だけでも習慣付けるのがおすすめです。
8-2 ピッキングの脱力を覚える
「ピッキングを練習しろ」と言ってしまうのは身もふたもないですが、やはり「弦の変形」による弦切れを防ぐためには、その元となるピッキングを改善する必要があります。
なので、ここで1つ「ピッキングの脱力」という言葉をテーマに練習してみてください。
弦は消耗品
そもそもギターがどういう仕組みで音を出しているのかおさらいしてみましょう。
指弾きでもピック弾きでも、細かく見れば弦を引っ張って「変形」させ、それを離すことで弦を振動させて音にしているんですね。
つまり、弦の変形はギターを弾く上で絶対に防げません。
これが弦が消耗品と呼ばれる理由です。
しかし、それでも弦の寿命が人によって全く違うのは実は「変形のさせ方」に関係してきます。
弦の変形と脱力
皆さんは音を出す前の「変形」に必要な力について考えたことはありますか?
例えば弓矢の場合、弓をよく絞って大きく変形させた方が矢が遠くまで飛んで行きそうですよね。
しかしギターの場合、弦を強く引っ張るほど大きな音が出ると言うことはまずありません。
つまり、ピッキング、フィンガリングの際必要以上に弦を引っ張っても、音も大きくならないし、弦は大きく変形することで「金属疲労」という爆弾を抱え込んでいくことになります。
なのでビシッとした力強い音を鳴らす練習中の方も、一度肩の力を抜いて、弦と接してみて下さい。
ギターでは「適度に力を抜け」という意味で「脱力して」という表現をよく使います。
嘘のような話ですが、意外と脱力した最低限の力の演奏の方がしっかりとした音が鳴るものなんです。
9. 1弦や同じ弦ばかり切れるのはなぜ?
皆さん、よく切れる弦は何弦ですか?
これは聞くまでもなく圧倒的に1弦〜3弦だと思います。
でも、もしかすると同じ弦ばかり切れる原因は「弦の細さ」のせいだと思っていませんか?
確かに、長時間使用することにおいて細い弦は何かと不利です。
しかし、数週間くらいのレベルでは本来そこまで大きな差にはならないはずなんです。
では細い弦は、一体何が原因で他の弦より早く切れてしまうんでしょう。
その答えは、「高音弦ほどアップピッキングの餌食になりやすいこと」です。
チョーキングで使用されやすいというのも理由の一部ですが、本質的にはこちらでしょう。
意識して見ればおそらく、弦が切れるタイミングもほとんどアップピッキングの時じゃないですか?
※3弦、4弦などがよく切れる場合も、以下に紹介する「ピッキングの癖」が大きく関わっています。(これもアップの場合が多い)
10.ピッキングの癖と引っ掛かり
皆さんのギターピッキングについて3つお聞きしたいのですが、
・アップピッキングの時に1弦がピキーンという強い音で鳴っていませんか?
・ダウンピッキングに比べるとアップピッキングの方が弦に引っ掛かって弾きにくい感じがしませんか?
・長く練習すると右手の人差し指が痛くなりませんか?
一つでも「YES」の方はそれが弦切れの原因です。
速い速度でピックを振り抜いていると中々分かりにくいのですが、これらは全て「ピックが弦に引っ掛かる」ことで起こります。
10-1 ピックが引っかかるとは
一度ギターを手にとって、騙されたと思ってゆっくりとバッキングをしてみてください。
恐らくダウンピッキングは弦を撫でるような角度、逆にアップピッキングは弦を引っ掻くような鋭い角度のピッキングになっている人が多いと思います。
当然、撫でるような角度であればスムーズにピックが動きますが、引っ掻くような角度であればピックは弦に引っ掛かって止まってしまいますよね。
これが「アップピッキングの引っかかり」と呼ばれる現象です。
10-2 引っかかりは弦への大ダメージ
実は意識的に練習した人でなければ、知らないうちにピックが引っかかってしまっている人がほとんどです。
しかし、これが速い速度で起こった場合、ピックは弦に引っ掛かって進めない状態なのに力で無理やりバッキングする形になりますよね。
そうなると、ピックが引っ掛かった弦は大きく引っ張られ「変形」した後弾けて、ピキーンという引っ掛かり特有のノイズになりますし、ピックを支える人差し指と弦にも大きな負担が掛かり、結果として腕に力も入ります。
そしてこれらが積み重なることで、「1弦がすぐに切れる」、「人差し指が痛い」などに繋がってしまうというわけです。
つまり、1弦がよく切れてしまうのを治すためには、「脱力の意識」だけでなく「アップピッキングの改善」も求められます。
ピッキングの癖によって引っ掛かりの位置やタイミング(ダウン、アップ)は変わるので、特定の弦がよく切れる方は3弦でも4弦でも同じようにピッキングを見直してみましょう。
おまけ:ピッキング練習と弦交換の方法
最後にピッキングについて具体的な練習方法などを扱った記事を2本と、弦交換の方法記事をご紹介しておきますね。
弦切れを防ぐために大切な脱力とアップピッキングの改善方法については「ギターの右手ピッキングの4つの練習方法とコツ」という記事の中で紹介しているので、また一緒に見ていきましょう。
「そもそもピッキングのフォームってどんなの?」という方は「ギターの正しいピッキングフォームと右手の使い方」から入るのがおすすめです。
「ギター弦交換の方法 |きれいに張り替えるコツと注意点とは」では切れた弦だけを張り替える「バラ弦」などについても扱っているので、良ければ合わせてご覧ください。
まとめ
弦がよく切れる人というのは、実は人一倍頑張って右手の練習に取り組んでいる人が多いような気がします。
きっとプロのような歯切れのいい音、かっこいい太い音を出したいという思いがあるからこそ、右手に力が入ってしまうんですね。
田村も、出音を気にしだすまでは弦なんてほとんど切れたことがなかったんですが、かっこいい音が出したくて練習をすればするほど、弦が切れるようになって行きました。
さて、今回の記事ではギターの弦が切れる理由について、
・ブリッジのせいであることは稀
・主に変形によって切れる
・弦が切れやすいのはアップピッキングの引っかかりのせい
ということを主にご紹介しました。
最後にリンクしたピッキング練習記事ではいよいよ問題のアップピッキングも改善していきます。
この記事を読んでみて、やはりギター側に弦切れの原因がありそうだと感じた場合は、自分でブリッジを削ったりする前に一度リペアマンや楽器屋さんに相談して見てもらいましょう。
今度ギターを練習する時、弦を1本だけそっと押さえて、小さく、丁寧に音を出して見てください。
意外と、いい音が鳴るものです。